第255話 王城での謁見(12)

 会話をしながら、スーツを着たあと椅子に座る。


「カズマ」

「どうした? エミリア」


 何か考え事をしていたエミリアが、話かけてきたところで、俺は彼女の方を見る。


「カズマは、今後はどうする予定なのですか? この国は、大国アルドノアという人間達から差別を受けています。そのために人間種に対する憎悪などが深く根付いています。ですから――」


 どうやら、エミリアは俺がこの国に居ることは必ずしも良い事ばかりではないと考えているようだ。


「エミリア。ここは、お前の国なんだろう?」

「それはそうですけど……」

「それなら、この国で皆に求められる――、認められるくらいの力を俺が示せばいいんじゃないのか? 一応、Sランク冒険者であるのなら、人間でも厚遇はされるんだろう?」

「それは、そうですけど……。子供とかは――」

「その点は、考えてある」


 そもそも、この世界では勉学という場所については、貴族が見栄の為に通う貴族院と、あとは私塾というのが存在している。

 私塾は、主に年老いた魔法師が商家などから依頼を受けて教えるモノであり、謂わば家庭教師のようなモノだ。

 つまり! 日本のように一般の学生が通うような学校というモノが存在していない。

 ということはだ! 閉鎖された空間――、学校という場での虐めがない。

 なので、特に問題ない。


「そうなのですか?」

「ああ。だから安心してくれ」

「分かりました」


 まぁ、アルドガルド・オンラインの中では、ハーフエルフというのは存在していたが、それ以外のハーフ系の種族は存在していなかったから、俺とエミリアとの子供と言っても、人間族か妖狐族、どっちかになると思うから問題ないと思うが。

 ただし、それは確定ではないので、いまはまだ言わない方がいいだろう。

 ぬか喜びだった場合、それはそれで問題だからな。


 ――コンコン


 思考していたところで、部屋の扉がノックされる。

 一端、考えを中断しドアを開けると女性の騎士が3人、扉を開けた場所で畏まっていた。


「女王陛下様からのご指示で、お迎えに上がりました」

「そうか、ご苦労様。エミリア、準備はいいか?」

「はい!」

「リオンとイドルは、この部屋で待機していてくれ」

「わかったのじゃ」

「分かりました。主様」


 女騎士に先導されて城の中を歩くこと5分ほど。

 複雑な廻廊を抜けた先に、大きな両開きの扉があり――、扉の縁は金で彩られていた。

 さらに扉の高さは4メートル以上あり、それが開いていく。


「カズマ殿。どうぞ」


 そう女騎士に謁見の前への入室を促されたところで、俺は足を踏み出す。

 そして扉を潜り、謁見の間へと足を踏み入れる。

 謁見の間は、床が白色の大理石が敷かれていて、赤い絨毯が謁見の間――、その入り口から女王陛下が座っている玉座まで敷かれていた。


「エミリア」


 俺は、彼女をエスコートするように手を差し出す。


「はい!」


 エミリアの手を握り謁見の間に入り、100人以上もの獣人族が左右に並んでいる中で、俺とエミリアは女王陛下の前に辿り着く。

 そして、彼女と共に膝をつく。


「Sランク冒険者、カズマ殿」

「はい」


 そう俺の名前が読み上げられる。


「貴殿は、行方不明であったワーフランド王国の第一王位継承権を有するエミリア・ド・ワーフランド王女殿下を救い、ワーフランドまで護衛し連れてきた。これに相違はないか?」

「相違はあります」


 周囲の獣人たちがざわつく。

 中には人間に近い容姿の――、エミリアのような獣人族もいるが、8割くらいが人とは掛け離れた獣人と言った出で立ちであり――、


「申して見よ」

「自分は、エミリアとは夫婦です。よって妻の故国に、彼女を連れてくることは――、挨拶に伺うことは当然かと思い此方に伺った所存でございます」


 俺の言葉に、周囲の獣人たちが、


「なんという……」

「ありえないわ。人間なんかと――」

「ワーフランド王家も地に落ちたか……」

「信じられない。人と婚姻を結ぶなんて……」

「女王陛下は一体何を考えて……」


 次々と王政を否定する言葉や、人間に対しての悪感情を口にしていく。


「静まれ!」


 ピシャリ! と、静かでいて透き通るような声色が、王座に座っていた女王陛下から発せられた。

それにより謁見の間に波紋のように広がっていく悪感情や嫌悪感が一瞬だが消えた。


「カズマ殿」


 女王陛下から、俺に話を切り出してくる。

 ここからは、俺と女王陛下の弁論次第。


「貴公は、私の娘であり次期女王でもあり、現在、王位継承権を有する王女と結婚したと――、そういう事でいいのですか?」

「ああ。間違いない」

「そうですか……。エミリア」

「はい」

「貴女は、王女という立場でありながら人と婚姻を結んだという重罪をどう考えているのですか?」

「私ですか?」

「ええ、そうです。カズマ殿は、ワーフランド王国の事情には疎かったかも知れません。ただ、貴女は違うでしょう? どういうつもりでカズマ殿と婚姻を結んだのですか?」

「男女の仲からです」


 ストレートすぎる!

 実の親に語る内容ではない!

 思わず、そんな思いが心の中で湧き上がると同時にツッコミを入れたくなった。


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