第254話 王城での謁見(11)

 用意された応接間に通されたあと、イドルとリオンは、それぞれ応接間のソファーに寝そべる。

 

「マスター。我々は、ここで待機でいいのですか?」

「ああ。リオンは、イドルと共に、この部屋で休んでいてくれ」

「分かりました」


 イドルが頷くのを確認したあと、俺はアイテムボックスからスーツとワイシャツ、そして革靴にネクタイに、ネクタイピンにカフスというフルセットを取り出す。


「ご主人様。随分と色々と付与されているように感じますが……」


 イドルが、じーっと俺を見てくると、そんなことを確認するかのように問うてくる。


「まあな」

「「じーっ」」

「なんだよ……二人とも」


 俺は、こちらをじーっと見てきているリオンとイドル。


「我のご主人様の装備が、どのような装備なのか気になった次第です」

「うむ。妾もマスターの装備が気になっているのじゃ」

「私も!」

「エミリアもか」

「だって、気になるもの」

「仕方ないな。エミリアの装備ほどではないぞ?」

「ちなみに奥方様の装備は、どのくらいの強化がされているので?」


 リオンが興味深々と言った様子で聞いてくる。


「私も、自身が着ているドレスの性能とかカズマから伺いましたけど、一覧で見られるのでしたら――」

「まぁ、エミリアが知りたいならいいか」


 俺は紙を取り出す。

 そして、エミリアの装備一覧を書き出していく。


 ●純白のドレス(フリル付き)


 【素材】 ミスリル銀

 【性能】「毒無効化」「魔法ダメージ軽減」「物理ダメージ軽減」


 ●オレイカルコスのネックレス


 【素材】オリハルコン(オレイカルコス)

 【性能】即死攻撃を一回だけ無効化


 ●反射のネックレス


 【素材】ゴールド

 【性能】「LV9以下の攻撃魔法の反射」「中・遠距離のテレパシー通信」


 ●スターブレスレット


 【素材】オリハルコンと隕鉄の合成

 【性能】水・地・風・火のLV5までの四大属性魔法を思考しただけで使用可能。回数制限在り。


 ●飛翔のヒール


 【素材】オリハルコンと、ボーンドラゴンの合成

 【性能】短時間の飛翔能力付与


「まぁ、エミリアの装備はこんな感じか」


 紙に書いた文字を、エミリアと2匹は読んでいく。


「さすが、マスター。これほどの装備は、竜族が収集した中でもないと思うのじゃ」

「うむ。我らのご主人様だけはある」

「あらためて確認致しますと国宝級どころか伝説級の装備というかドレスと装飾品ですね」「それだけエミリアのことを大事に思っていると思ってくれ」

「はい! それで、カズマの装備は?」

「俺のも必要か?」

「はい!」

「仕方ないな」

 

 ●グレーのスーツ(上下)


 【素材】普通の糸

 【性能】「毒無効化」「魔法ダメージ軽減」「物理ダメージ軽減」


 ●炎風のカフスボタン(右)


 【素材】オリハルコン(オレイカルコス)

 【性能】風・火の攻撃を50%カット


●地水のカフスボタン(左)


 【素材】オリハルコン(オレイカルコス)

 【性能】水・地の攻撃を50%カット


●加護のネクタイ


 【素材】ミスリル銀糸

 【性能】短時間、あらゆる攻撃を防ぐ結界を展開する。


●反射のネクタイピン


 【素材】オリハルコン(オレイカルコス)

 【性能】「LV9以下の攻撃魔法の反射」「中・遠距離のテレパシー通信」


 ●羅針盤の腕時計


 【素材】オリハルコンと隕鉄の合成

 【性能】短時間だけ時間停止が可能


 ●革靴


 【素材】ボーンドラゴンの表皮

 【性能】ダメージリダクション効果


「カズマの装備も伝説級ですね」


 エミリアが、呆れた声色で話してくるが、もうそれは今更な件だ。

 リオンもイドルも最初のエミリアの装備で驚きのピークを過ぎたのか、諦めたようでソファーの上に寝そべる。

 そんな連中を見て俺はスーツを着る。

 

「カズマ。髪は私がセットしますね」

「いいのか?」

「はい。そこに座ってください」


 エミリアはブラシを持ちながら、鏡の前に座るように促してくる。

 

「普通は逆な気がするが……」

「カズマへのお礼です」


 鏡の前に座ると、背後から俺の髪をブラシで梳いてくる。


「あの……カズマ」

「どうした?」

「お母さまが大変に失礼なことを――」

「気にすることはない」


 そもそも、アルドガルド・オンラインの世界において獣人と人間は関わりが殆どないどころか、交友関係も殆どなかった。

 その理由が人間と獣人との仲違いであったのなら、この国の女王の俺への接し方についても説明がつくことだし、そもそもな話、妖狐族はアルドガルド・オンラインでは絶滅していた種族だった。

だから、今、エミリアのお腹の中に俺とエミリアの子供が居ることは、システムから逸脱してきたとも言える内容であって……。

そこが気がかりな部分でもあった。


「俺が親なら、エミリアの母親が杞憂している事も分かるからな。特に、エミリアの母親は女王陛下だろ? ――なら、より神経を張り詰めているはずだからな」

「カズマ……、ありがとうございます」

「気にするな――って、言ってもエミリアは気にしちゃうんだろけどな。だが、俺はエミリアとお腹の子供を守る義務がある。父親としてな! だから、何かあったら些細なことでもいい。相談してくれ」

「分かりました」



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る