第149話 砂上の戦闘(8)

「――き、貴様! に、人間か……?」

「人間以外の何に見える?」


 俺は両手を腰に当て、周りを見渡しながら言葉を発するが、場は静まり返っている。

 

「――ッ! まぁ……いい。何のつもりで、獣人への躾を邪魔した?」

「躾? 殺せと言っていなかったか?」


 溜息をつきながら俺に話しかけてきた男を見る。

 男は、顔色を赤くしていくと共に、体を震わせていく。

 

「つまり、貴様は獣人の味方をするつもりか!」

「おいおい、まずは俺の質問に答えろよ。お前、俺の話している内容を理解しているのか?」

「――ッ!」

「何を驚いているんだ? 俺は最初に姫君とは何か? と、聞いたんだが?」

「……唐突に表れた貴様に答える理由があるのか!」

「まぁ、たしかにな……ヒール」


 俺は周囲で兵士達に斬られて倒れている獣人たちに向けて回復魔法をかける。


「うう……一体……」

「何故、人間が……」

「どういうことだ……」

「どうして回復を……」


 呆けた様子で次々と怪我が治癒していき立ち上がっていく獣人たち。

 そして、周囲を取り囲んでいる兵士達と言えば――、


「ばかな……」

「どれだけの魔力を擁して……」

「ありえない。回復魔法を同時に発動させるとは……、それに……あれだけの回復量は……」

「どうして獣人なんて劣った生き物を救うような真似を……」


 驚愕の眼差しと同時に呟いていく。

 

「貴様! どうして、獣人の回復をした!」

「どうしてって、獣人の話を聞く限りでは、お前達の方が悪いだろう? だから回復魔法をかけたんだが、何か問題でもあるのか?」

「貴様ッ! かまわんっ! この男は、獣人の味方をした裏切り者だ! まとめて――ッ!?」


 叫んだ男の頬が唐突に裂ける。

 それと同時に男の後方――、木材建築の建物の壁に氷の魔法で作りだした『アイスランス』が突き刺さった。


「――なっ……」

「別に俺に喧嘩を売るのは構わないが――」


 俺は頭上に指先を向ける。


「ば、ばかな……。――な、なんだ……あの巨大な火球は……」

「理解したか? 俺に喧嘩を売った瞬間に、お前らの頭上に火球を落す事になるが、それでも構わないなら攻撃してきてもいいぞ?」

「貴様……、お前は、一体何者だ?」

「人に名前を聞くなら、お前から名乗るのが筋じゃないのか?」

「――クッ。私は、エイラハブの兵士団長のマシュー・ブラモンドだ」

「ふむ……。俺の名前は、カズマだ。魔王軍と戦っているSランク冒険者だ」


 俺は懐から冒険者ギルドカードを取り出しながら、俺と会話している男に見えるように掲げる。


「Sランク冒険者だと……? そのような話は……」

「お前に話が行っているかどうかは関係ない。俺としては、魔王軍と戦っている状況下で問題を起こしている貴様に対して聞きたいことがある」





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