第216話 エピローグ(3)
部屋に食事を運んできてもらった後、食事を摂る。
「マスター。奥方様の御国に行かれると言う事ですが――」
「そうだな。イドルのミニドラゴンに獣人国を守ってもらうとしても、一度は顔を出して置く必要があるしな」
リオンが肉を口にしながら問いかけてきた内容について返答する。
「あの……カズマ」
「どうした? エミリア」
「それって、私のお母様やお兄様に?」
「それが本命だな。エミリアを娶ったんだし、きちんと挨拶しておくことは必要だろうし」
「……カズマ」
俺の言葉にジッと煽情的な眼差しを向けてくるエミリア。
「マスター。我とリオンは?」
「それはないな」
「どうしてですか! 我の姿は、人間だけでなくエルフと比較しても見目麗しいと自覚しております!」
「そういう意味じゃないからな。そもそも、お前らは、俺とは種族が違うだろうに。ドラゴンだろ……」
「カズマ……」
「ん?」
「私なら気にしませんよ? カズマは、私と旦那様なのですから、私は王位継承権を持っておりますので、王族という形になります。そうしますと、自然とそれなりの貴族位に就くことになります」
「うむ。――となると妾は、側室として魔神様と奥方様を支えると言う事になるわけじゃな!」
「我も!」
「……」
どうも、この世界は他の俺が読んできた物語と同じように側室を娶るのが普通という感覚らしいな。
「やれやれ……。まあ、考えておくとしよう」
郷に入っては郷に従えというからな。
「でも、私が本妻ですからね?」
「それは分かっている。――むしろ、俺としてはエミリアだけでいいまであるんだが?」
「それは貴族としては……」
「つまり貴族じゃなければ……」
「それは難しいと思います。少なくとも……」
「だよな。エミリアは獣人国ワーフランドの王女だからな」
「いえ。そういうことではなく……」
言葉を濁すように話すエミリア。
「まだ何かあるのか?」
「おそらくですけど……明日の謁見時には――」
「つまり、女王が俺に貴族籍を用意すると?」
「その可能性は非常に高いです。むしろ、それ以外にカズマの功績に見合うような褒美は無いと思いますので」
「なるほどな……」
それなら金貨というよりも港町ケインの借金を支払って欲しいモノだ。
――翌朝になり、昨日はエミリアとベッドを供にした俺は朝食を摂ったあと着替える。
着替えの服は、城側で用意されたもの。
しかも、俺だけでなく4人分用意されていた。
「しかし、まぁ……」
男の俺が着る服は、白いズボンに靴にシャツと言った、どちらかと言えばタキシードのようなモノ。
しかも、腰には儀礼用の剣まで下げているのだから日本人の感覚を持つ俺からしたら違和感がハンパない。
「――か、カズマ……、どうでしょうか?」
「――あっ」
思わず声が漏れると共に俺は、その様相を見て固まる。
隣の衣裳部屋から出てきたのは、エミリア。
服装は、白を基調としたローブ。
所々に、金の刺繍が入っており、小さな王冠を頭に乗せていて気品が内側から漏れ出ているようだ。
「似合ってないですか?」
「いや。似合いすぎていて、心臓が止まるレベルだった」
「くすっ。それって大事件ですよね?」
「そうだな」
「マスター! 妾は、どうじゃ?」
リオンが着ている服は青を基調としたマーメイドドレスであったが、背丈が高くないのでドレスに着せられているといった感じだ。
「お子様にしか化身できないリオンよりも我の方が遥かに似合っているはずだ」
褐色の肌に、赤い色のドレスを身に纏ったイドル。
何と言うか映える光景だな。
「二人ともいいんじゃないのか?」
「奥方様の時と違って感情が篭っていないのじゃ!」
「主様、もう少し褒めても良いのですぞ!」
どうやら、リオンもイドルも俺の褒め方には不満があったらしい。
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