第107話 デリア総督府消滅(7)

「どのような依頼でしょうか?」

「デリアの町中で出現する可能性がある魔物の討伐依頼だ」

「その依頼は御受けすることはできません」

「それは、町の中が安全だからと考えているからか?」

「はい」


 迷いもなく受付嬢は頷く。

 

「それなら証拠があれば依頼を受けるということか?」

「証拠とは?」

「リオン。連れてきてくれ」

「了解した。マスター」


 すぐに幌馬車からデジルを連れてくるリオン。

 そして床の上に転がす。

 まだ意識を失っていたので、俺はこれ幸いと受付嬢へと視線を向ける。


「こいつが、その証拠だ。スケルトンに襲われていた所を助け出した」

「これは……ひどいですね」

「だろう」

  

 まぁ実際、攻撃したのは俺なのだが、そんな事を言うつもりは一切ない。

 

「これで納得してもらえたか?」

「――ですが、魔物の姿を確認できないので……」

「それでは、町の中の巡回というのはどうだ? それでも戦闘が起きたら都度対応、倒した魔物の数で報酬を出す。魔物が出なくても一人当たり金貨1枚を出そう。これでどうだ?」


 俺の言葉に周囲がざわつく。

 それもそのはず。

 町中を巡回するだけで、金貨1枚つまり日本円換算として10万円がもらえるのだ。


「なあ、俺が、その仕事を引き受けてもいいぜ!」


 そして、うまい仕事には裏があるという事を考えずに受ける連中も当然出てくる。

 さらに一人が仕事を受ければ心理的ハードルは下がる。


「俺もだ!」

「私も!」

「うちも!」


 次々と手が上る。


「あ、あの……直接的な依頼はちょっと……」

「分かっている。だから、冒険者ギルドを通そうとしている。参加する人数は無制限。いくらでも雇ってもらってもいい。それでどうだ? 支払いは、ハイネ領主がする事になっている」

「……分かりました」


 渋々と言った様子で頷く受付嬢。

 すぐに書類が作られて次々と俺が出したクエストを受領し、外へと出ていく冒険者達。


「カズマ、良かったのですか?」

「良いも悪いもない。実際に町中に魔物が出現したからな。人海戦術で魔物が出たら対処しなければ死人が出かねない」

「そうですね……」


 話しが一段落ついたところで、奥へと向かって姿を消していた年配の受付女性が戻ってくる。


「カズマさん。ギルドマスターがお会いしたいとのことです」

「そうか」


 どうやらハイネで行った事は、それなりに効果があったらしい。

 さて、ここからが正念場だな。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る