第158話 砂上の戦闘(17)

 視界内に表示されているMAPを見ながら、エイラハブの街へと向かう。

 

「思ったよりも離れたな」


 視界内に表示されている表示されているMAPを拡大し、距離を確認するがリオンが幌馬車を引っ張って移動した距離は思ったよりもある。

 少なくとも5キロ近い。


「あの短時間で、5キロ近く移動するとか……、荷馬車を利用した運送業を営んだ方が安定したお金が稼げるのでは……」


 冒険者ギルドからの依頼が済んでから、何か安定した職に就きたいと思っていたが、違う意味で稼げる糸口を思いつく。

 太古から迅速な輸送手段というのは、何時の時代も求められているものだからな。

 

「さて――、とりあえず向かうとするか」


 強化されたステータスで、俺はかなりの速度で走ることができる。

 走り出すと、景色は一瞬で後方へと流れていく。

 それと共に、視界内に表示されている青い光点は、町へと直進していく。

 あと数十秒で到着できるだろうと予測がついたところで、俺は足を止める。

 理由は――。


「ようやく追いついたぞ」


 そう――、俺がエイラハブの街の外に置いてきた獣人達と遭遇したからだ。

 また厄介な……と、心の中で思っていると、ダルアが口を開く。


「聞きたいことがある!」

「どうしてエミリアと一緒に居たのか? と、言う事か?」

「姫様の名前を呼び捨てにするなど……」


 俺の一言が癇に障ったのか、鋭い視線で俺を睨みつけてくる獣人達。

 すぐに飛び掛かってこないのは、俺の実力を理解しているからだろうな。


「エミリアは、俺の妻だ。妻に対して様付けをする方がおかしいだろう?」


 エミリアが、何かを隠しているという事。

 そして――、俺には話せない何かがあるという事実。

 それらがあり、鬱々とした気分のまま棘のあるような言い方になってしまうが――。


「――な! ……つ、妻だと……!?」


 俺の一言が、衝撃的だったのか口を大きく開け目を見開き俺を見てくるダルア。

 ――いや、ダルアだけでなく獣人達が全員、呆気の表情をしている。


「とりあえずだ。お前らとはゴタゴタを起こすつもりはない」


 俺はダルアの横を通り過ぎる。

 その時、俺の肩をダルアが掴んできた。


「待て! どういう事だ! 獣人と人間なぞが婚姻関係を結ぶなど、そんな事が許される訳がない!」

「許されるも何も、俺はお前達の事なんて知らないし、婚姻に関して第三者の意見を取り入れる必要があるのか?」


 肩を竦めながら俺は答える。

 

「なんだと!?」


 俺の返答に気に入らないのか声を荒げるダルアの手を俺は肩から引きはがす。


「――ッ!? カズマ、お前は一体……、獣人よりも高い身体能力を……」

「一言言っておくぞ? 俺は、お前達の指図は受けない」

「それは獣人に対して配慮はシナイという事か? 人間と同じで……」

「いや、俺も一応人間だからな。それと配慮なんて言葉を自分達で使うな。配慮って言葉は、悪意ある意味だし、俺が一番嫌いな言葉だ」

 

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