第159話 砂上の戦闘(18)

「――何っ!?」


 俺の言葉に、獣人達が一斉に騒めくと、その獣の瞳をギラリと色めかせる。

  

「やれやれ」


 少し言葉が乱暴だったなと自覚する。

 エミリアが何かを隠していることに関して、色々と考えていたこともあったが話してくれない事に少し苛立ちを覚えていたのかも知れない。


「何だ?」

「いや――、それよりもよく考えてみろ。俺は、エミリアと婚姻関係を結んでいると言っただろう? つまり夫婦ってことだ。伴侶にした人間が獣人だったって言う事は、俺は獣人を下に見ていないという証だろ?」

「……」


 無言になり、互いを見る獣人達。


「だから、俺は別に獣人を何とも思っていない。何か思って欲しいという考えこそが差別を増長させるんじゃないのか?」

「……だが」

「別に、直ぐに納得してくれとは言ってないし、俺の考えを押し付けるつもりもない。ただ一つだけ言わせてくれ。俺は、エミリアのことを自分の命をかけても幸せに――、守ると誓った。そこに嘘偽りはない」

「お前達――」


 ダルアが目を伏せたかと思うと、溜息交じりに言葉を呟く。

 どうやら、それが臨戦態勢解除の指示だったようでダルアから獣人が数歩下がると同時に殺気が霧散する。


「カズマ殿の言葉を信じよう。姫様も、あのような笑顔を見せるような事は、我々の前でも両親の前でもなかった。それに、我々を救ってくれたのも確かだ」

「そうだな。お前達を救う為にエイラハブの町の兵士達に喧嘩を売ったし、俺の冒険者ギルドでの評価がどうなってしまったのか、とても気になるところだ」

「それは……」

「気にするな。俺は、お前達を助けたことを後悔したつもりはないし、以前にも言ったが、お前達の方に事の理があると思ったから仲裁に入っただけだからな」

「すまない」

「謝罪の言葉よりも感謝の言葉がいいな」

「分かった。助けて頂き、ありがたく思う」

「よし、それで、お前達を助けた件についてはチャラだ」


 俺は話が終わったので町へと足を向けるが――。


「ところでカズマ殿は、エイラハブには――」

「ちょっと所要が出来たと言っただろう?」

「それに我々が同行することは……」

「それは却下だ。これは俺の問題だからな」


 とくにエミリアが何かを隠していることは明らかだし、それは俺に話すことを躊躇する内容。

 なら、第三者を連れていくのは良くない。


「だが、恩人に手を貸さないというのは――」

「そう思うのなら――、ダルア」

「何だ?」

「エイラハブの町について聞きたいことがある。エイラハブの町は――、周辺の砂漠は俺が知っている限りでは緑豊かな土地だったはずだ」


 そう、アルガルド・オンラインの世界では、エイラハブという町というか、この周辺は穀倉地帯だったはず。

 それが、どうして砂漠地帯になっているのか、そこが気になっていた。





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