第160話 砂上の戦闘(19)

「何を言っているんだ? ここは元々、砂漠地帯のはずだが?」


 だが、俺が思っていた事とダルアからの返答は、まった異なるモノだった。

 

「本当か?」

「ああ、間違いない。だが、何故に、そのような事を聞いてくるんだ?」

「……いや、俺の勘違いだったようだ」


 アルドガルド・オンラインについて説明するのはリスクがあると判断し、俺はダルアに聞いた内容を取り下げる事にする。

 少なくとも、ダルア達、獣人にとっては、リーン王国の砂漠の街エイラハブ周辺は砂漠地帯だという認識は間違ってはいないようだ。

 何しろ様子を見るに嘘を語っているような様子ではないからだ。


「そうか。――ならいいが……。――で、我々は何を手伝えば……」

「特に手助けしてもらう事はないが……。とりあえず大人しくしておいてくれないか?」

「大人しくという事は、黙って付いてこいという意味か?」

「いや、普通に街の外で待機するか国元へ帰ってくれという意味なんだが?」

「それはできん!」

「理由を聞こうか?」

「姫様を連れて帰らなければ陛下に会わす顔がないからだ」

「そうか……」


 たしか、ダルア達はエミリアを探してエイラハブの町に来ていたんだったな。

 そうなるとエミリアを見つけた以上、連れ帰らなければ立つ瀬もないと言ったところなんだろう。

 だが、俺には関係ないがな!


「分かった。それなら、街の外で待機するというのはどうだ?」

「つまり、それは我々がカズマ殿の頼みを聞くのなら、姫様を国元へ連れて行ってもいいということか?」

「誰も、そんな事は言っていないからな? とりあえず、人間とゴタゴタするのは止めておけ」


 俺は釘を刺す。

 俺がゲームをしていた『アルドガルド・オンライン』というタイトル。

 その世界において獣人の国は存在していない。

 存在しているのは魔物として人間を襲ってくるモンスターとなった獣人くらいだ。

 その理由を当時は考える事はなかったが、いまの獣人の問題と人間との確執を見る限りでは絶対に何かあったということは、簡単に想像がつく。

 

「だが――」

「だがも何もない。お前達に何かあれば、エミリアが悲しむかも知れないからな」

「……分かった」


 俺の説得に、渋々と言った様子でダルアは引き下がる。

 そして、ダルアと分かれたあと、俺は一人、砂漠の街エイラハブへと向かう。

 システム上でダルア達の動きを追っていたが、動きが無い事から律儀に約束を守る腹積もりなのだろう。

 俺は、それ以上、考えることはせず見えてきた砂漠の街エイラハブの壁まで走りよると、そのまま跳躍し、壁を乗り越え街の中へと着地した。





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