第31話 港町ケイン防衛戦(9)
とりあえず攻撃魔法とセットで防御魔法もついてきたのは運が良かった。
別に防御魔法の区別が存在していたら、また教えて貰える人を探す必要があったからだ。
そもそも、爺さんは攻撃魔法しか使えないらしいし。
「これが報酬になる」
これは、大量に倒した猪や大型の猪、そしてストーンゴーレムの破片で金貨720枚ほど手に入れていた。
「おおお! 爺さん、すげーな!」
「ホッホッホッ、これで引退じゃのう。最後に、稼がせてもらったわい」
「引退は、まだ先になりますよ? カンダタさん」
「なんじゃ、ソフィアのお嬢ちゃん。もう年寄なんじゃから、少しは労わってくれても――」
「ストーンゴーレムの存在が近くの平原で確認されました」
爺さんが言い切る前に、ソフィアが言葉を被せる形で発言。
それを聞いていた冒険者ギルドに居た30人近くの冒険者たちが、酒を飲んだまま固り、場は静まり返った。
「――ど、どういうことじゃ? この辺にダンジョンはなぞは……」
「そうだぞ! ダンジョンなんて、そうそう出現はしないだろ!」
俺に、何時も話しかけてくる名前を聞いたこともないが親しい仲の男がソフィアに詰め寄っている。
「お伝えしたとおりです。何者かが、ケインに悪意を持って攻撃してくる可能性があります。そこで、ケインの冒険者ギルドは、町の中にいる全ての冒険者に強制招集をかけます」
ソフィアの言葉に耳を傾けていた冒険者たちは顔つきが変わる。
いつも、酒ばかり飲んでテーブルで寝ている冒険者たち。
ふざけたことを言っている奴ら。
町の中で雑務をして日銭を稼いでいると豪語している連中。
誰もがゴクリと唾を呑み込むと――。
「こんな町にいられるか! 俺は隣国のギランに逃げさせてもらうぜ!」
――と、いう言葉を皮切りに冒険者ギルドから逃げだそうとする連中。
その姿には、凛々しいという言葉どころか、沈む船から逃げ出す鼠のような姿しか思い浮かばない。
「再度言います! ここで町を守らず、戦闘に参加しない方には早馬で近隣の町に貴方達の名前を送付します。そうしたら冒険者として暮らしていけなくなりますが、それでも良いのでしたら、町から出ていってもらって構いません」
そこまで語るとソフィアはニコリと笑う。
――ただ、その瞳は一切! 笑っていない。
「俺、この戦いが終わったら告白するんだ――アイツに」
「まだ美味いものを食べてないのに!」
「将来は王国の騎士になって……」
なんか次々と哀愁が漂う夢を語る冒険者たちが絶望な表情で椅子に腰かけていく。
まぁ、さすがに冒険者の資格を剥奪するとされたら、生活できなくなるからな。
参加せざるを得ないか。
「――ただ! 皆さんに朗報があります。お知り合いの方で、戦いが出来る方を連れてきてくれれば、その人と交代で、ノーリスクで他の町に避難する許可を考えてもいいです」
その言葉を聞くや否や、冒険者たちは走って冒険者ギルドの建物から出ていく。
俺は、その後ろ姿を見たあと溜息をつく。
「ソフィア」
「はい」
「許可を考えてもいいってことは、考えるだけでいいってことだよな?」
「そうですね」
ニコリと笑みを浮かべて、ソフィアは同意してきた。
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