第120話 デリア総督府消滅(20)
背中からは数メートルほどのある砕かれた大理石の塊を振り落としながら、地響きを轟かせつつ、確実に近づいてくる巨大なボーンドラゴン。
その姿を見据えながら、俺は視界内の魔法アイコンを無数に開き、魔法コマンドを選択していく。
「死ね! 勇者!」
咆哮と共に漆黒のブレスを俺に目掛けて放ってくる。
そのブレスは、触れていなくとも周囲の地面を焼き尽くしていく。
俺は、その光景を見ながら風属性の魔法を発動させる。
「LV7の風属性魔法! ウィンドソード!」
魔法発動と同時に、アイテムボックスからグレートソードを取り出し、風属性の魔法を纏わせ横薙ぎに振るう。
すると、地面を焼き尽くしていたボーンドラゴンが放ったブレスは真っ二つに切り裂かれるどころか粉々に弾け周囲へと飛び散り、周囲に漆黒の水たまりが出来――、その水たまりが燃え盛る。
「――なっ!? きさま、何をした!?」
何が起きたのか理解が追い付かないのかブレスを放つことを止めたボーンドラゴンは驚愕の声を上げるが、実は簡単な原理に他ならない。
ボーンドラゴンが放つ属性は土属性。
そして土属性には風属性の魔法が効果を発揮する。
さらにボーンドラゴンは、大地の石油や鉱物を原料としたブレスを放つ。
これらの知識は、アルガルド・オンラインでは当たり前であり常識。
つまり水では、石油などを広めてしまうし、火はタブーであり、土属性では意味を為さない。
ただ、風属性の力だけが吹き散らし、無効化する事が出来る。
それは、攻略通信を丸暗記し20年間、アルガルド・オンラインで最強を誇っていた俺だからこそできる技術であり知識だ。
「答える必要があるのか?」
態々、相手に自分の手の内を晒すなど、オンラインゲームではありえないことだ。
自分は初心者だと言っているような物。
「おのれ!」
再度、ブレスを放とうとするが――、その口元にLV1の火属性魔法であるファイアーアローが突き刺さる。
そして、ボーンドラゴンの頭が爆散し体全体が燃える。
「グアアアアアアア。ばかな……、ほんの一瞬を――」
「貴様の攻撃は、20年間の間に見極めた」
「なん……だと……」
超絶高ランクMAP、神々の塔というMAPではボーンドラゴンは中層からは腐るほど出てくる魔物の一体。
つまりMOBキャラに過ぎない。
さらに俺の称号には『魔神』の称号もあり、魔王軍四天王だろうとダメージが入る。
つまり――、俺にとって目の前のボーンドラゴンは姿形さえ理解出来てしまえば、遥か昔に攻略した雑魚モンスターと大差ないのだ。
「世迷言を!」
呪いを込めるかのように咆哮し、直径3メートルほどもあろうかという骨で作られた尾を振るってくる。
その尾を、俺のグレートソードが真っ二つに斬り捨てる。
切り裂かれた尾の先は、総督府内の地面を転がっていき――、瘴気を霧散させると数百の人の骨となりバラバラに崩れる。
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