第91話 エミリアの修行の結果
「エミリアか。無事だったか?」
「はい」
「それは良かった」
ホッと一息をつきながら、俺はリオンの方を見る。
するとリオンは丸太の上に座ったまま、俺とエミリアの方を興味深そうに見てきている。
「リオン。エミリアの――」
「マスター。今回、オークを倒したのは全て奥方様だ」
「――え? そ、そうなのか?」
「その通りだ。ここ連日の修行の成果と言ったところだ。そして、妾の教え方が上手いという結果でもある」
リオンの話を聞きながら、洞窟の入り口周辺を確認するが死体となって転がっているオークの数は50匹以上存在している。
それをエミリア一人で倒したとは……。
傷口を見ていくと、全て長刀で斬られたあと。
リオンが地から任せで倒したという跡は一切ない。
つまり、エミリアの修練の結果と言うことになるが――。
「エミリア、よくやったな」
「はい! がんばりました!」
さらにギュウと抱き着いてくるエミリア。
そして気になってくる周りの視線。
洞窟内から助け出した女性達は俺の方へと好機の目を向けてきている。
きっと、おそらく――、いや! 間違いなく、あとあと噂されるに違いない。
まぁ、それはいい。
何せ、エミリアは俺の嫁だからな!
「洞窟内の魔物は全部倒した。とりあえず、村まで帰るぞ」
「了解した。マスター」
「はい!」
リオンとエミリアが了解の意を示してきたところで、ようやくエミリアは多くの女性達に見られているのに気がついて、顔を赤面させて離れたが、すでに無駄だというモノだ。
そんな事を思っていたが口にすることはしない。
とりあえずオークの死体も換金できるので、アイテムボックスに仕舞いウッドパルプの村へと帰路へとつく。
村が見えてきたところで、一人の男が俺に駆け寄ってくる。
「冒険者カズマ様。オークを討伐したんですね」
「ああ、村に報告にいってくれ」
「わかりました。グラス、君が無事でよかった」
俺達が連れて戻った一人の女性が、待っていた男に駆け寄ってキスをするシーン。
それは感動のシーンなのだろうが、大勢の前でするのは些かTPOに欠けるのではないだろうか?
――とか、考えたが俺とエミリアも大概だったと思い出し、注意することはしない。
「それよりもムラガ。貴方こそ無事でよかったわ。オークに斬られたのに……。そこのカズマ様が回復魔法で助けてくれたんだ」
俺を指差してくるムラガという男。
「そうなのね! カズマ様! 助けてくださって、ありがとうございます」
「気にする事はない。人として当然のことをしたまでだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます