第55話 ハイネ城炎上!(2)

 馬車に揺られること20分弱。

 湖をぐるっと回る為に思ったよりも時間が掛かり領主の城に到着した。

 城門は格子の柵であり、兵士の合図と共に上がっていく。

 完全に上がり終わると黒光りしている格子の柵の下を潜りぬけ敷地内を馬車で走りぬけたあと、馬車は館の前に停まった。


「カズマ殿」


 外から声をかけられたので、俺は馬車から外へと出る。

 目の前には3階建てのレンガ作りの建物が建っており、屋根は青く――、外壁は白で塗られている。

 まるで町にある住居などと同じように色合いは統一されていた。


「こちらへ」


 建物を見上げていると兵士が屋敷の中へと案内してくる。

 入口から、しばらく歩いた通路の付き辺り――、重厚な両開きの扉があり兵士がノックをした後、館の主人であろう者の許可が下りる。


「それでは、カズマ殿。ここからは、カズマ殿だけで」

「分かった」


 俺は両開きの扉を開ける。

 思ったよりもスムーズに音も立てずに扉は開閉する。


「カズマだ」

「中に入れってくれ」


 特に威圧感など感じず室内に入ると、そこは所狭しと書物が棚に並べられた場所。

 大きめの机が奥には鎮座しており、羽ペンなどが置かれていることから執務室だと推測できたが……。


「ずいぶんと地味な部屋だな」

「君は、ずいぶんと失礼な人間のようだ」

「すまない。つい思ったことを」

「そこは弁明するべきところだと思うが」


 その言葉に俺は「たしかに」と思いつつ肩を竦めながら視線を横へとズラし、そこに座っているであろう人物へと視線をむける。

 男はボサボサの白髪で、ほとんど運動をした事がないのか病的なまでに白い肌と針金のような体つきをしている。

 日本で言うのなら、研究者と言った雰囲気を感じる。


「ヘイゼル・フォン・ハイネだ。君が、カンダタさんの弟子だと伺ったので会ってみたかった。それに魔法の腕も一級品とセイガルから報告を受けている」

「なるほど……」


 ――と、言うかカンダタの爺さん、結構、有名人なのか?

 俺からしたら、いつも冒険社ギルドで酒を飲んで寝ている爺さんってイメージなんだが……。

 本当の事を言ってやりたい衝動に駆られつつ、


「それで、俺に会いたかった理由は?」

「単刀直入に言おう。力を貸してほしい」

「自分の所の軍隊がいるだろう?」


 俺の言葉に、男は立ち上がる。

 身長は2メートル近く見上げるほど。


「そうなんだけどね。ハイネの兵士では、手に入れることが出来ないのだよ」

「手に入れる事が出来ない? どういうことだ?」

「カズマ君。君は水の魔法は覚えているか?」

「まぁ一通りは――」

「さすがだ。そこで君には水竜の巣に行ってきてほしいんだ」

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