第138話 城塞都市デリアⅡ(9)

「だから何とかならないか?」

「それは無理だな」

「どうしてもか?」

「どうしてもだ」


 そもそも、リオンがパーティに居る時点で、龍籠を利用して空での移動自体が物理的に無理だ。

 まぁ、その事をラムドに言うつもりは無いが……。


「まぁ、陸路で王都まで向かう感じになるな。そこを譲ることは出来ない」

「……そうか」


 ラムドが肩を落とす。

 俺が折れない事を理解したのだろう。

 まぁ、俺としてもさっさと依頼を終わらせることができるのなら、空路での移動が便利なのだから使いたいのは山々だが、こればかりは致し方ない。


「ラムド」

「何だ?」

「一応、提案なんだが」

「提案?」

「冒険者ギルドの人間を龍籠で王都まで運んで偵察する事は出来ないのか?」


 少し考える素振りを見せるがラムドは、重苦しく口を開く。


「魔王軍の主力がいる場所に、普通の冒険者を送り込むなんて自殺行為に他ならないぞ?」

「俺ならいいのか……」

「カズマさんは、魔王軍四天王を次々と撃破していますから!」


 俺と、ラムドの話を聞いていたソフィアが横から口を挟んでくる。

 まぁ、部屋の隅で書類の山に埋もれていたのは見えていたから、いつか話に加わってくるとは予想が付いていたが……。


「一応、俺も冒険者の一人なんだがな……」

「今現在、リーン王国において最強の冒険者ですよ! カズマさんは!」

「そうか……」


 まぁ、20年というアホほど長い年月を費やし育ててきたステータスを持ち、仕様も攻略通信以上に理解している俺は異例中の異例なんだが……、それにしても、もう少し何とかならないものか。


「とりあえず、偵察は強制ではなくあくまでも提案だからな。考慮に入れて置いてくれ」

「……分かった」

「あれ? カズマさん、もう行かれるのですか?」


 話が済んだところで、俺は椅子から立ち上がる。

 それに気がついたソフィアが顔を上げて話しかけてきた。


「そうだな。ここで結論の出ない会話をしているよりかは、少しでも王都に向かった方がいいだろう?」

「そう……ですね……」

「それじゃ、ラムド。あとは任せた」

「分かった。デリアの復興については、冒険者ギルドが総力を挙げてやっておくからな。もし王都が存続していたら王宮側には、そのように伝えておいてくれ」

「分かった」


 冒険者ギルドマスターの部屋から出たあとは、通路を歩き冒険者ギルドの受付を通り抜ける。

 そして冒険者ギルドから出た頃には、日は完全に頭上に来ていた。


「もうお昼か……」


 思わず言葉が漏れる。

 とりあえず宿に戻り食事を摂ってから、王都に向かうとするか。





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