第73話 さあ、報復の時間の始まりだ!(4)

 深々と、皆月の太腿に刺したダガーを、引き抜く。

 すると圧迫されて堰き止められていた魔物特有の青い血が噴水のごとく噴き出す。


「いぎいいいい」


 言葉にならない声を上げながら、じたばたとムシケラのごとく藻掻く皆月の首を掴み持ち上げ、上空へ跳躍したあと、地面へと投げつける。

 ドンッ! と、言う音と共に、隕石が落下したがごとき衝撃波が周囲に撒き散らされ、それと同時に青い血が花のように飛び散った。


 地面へと降り立ち、皆月に近づくと、その瞳はすでに何も映してはいない。

 辛うじて息をしているだけ。

 それも放置しておけば、すぐに止まるだろう。


 ――つまらない。


 この程度で! この程度のことで! 俺の気が張れる訳がない!


「ヒールLV1」


 光が皆月の体を瞬時に修復していく。

 そして、意識が戻ったのか「イヤアアアアアアアアア」と、絶叫の声を上げる皆月。


「た、田中……。どうして……、どうして……」

「言葉にならないというやつか?」

「私は、あんたに! ここまでされるような事はしてないわ!」

「おいおい、何を言っているんだ? ここまで? ここまで? おいおいおいおいおい。この程度で、ここまでとか……クククッ――。フハハハアハハハハハハハッ」


 あまりの言い分に笑うしかない。


「何よ! 何が楽しいのよ!」

「楽しい? 何を言っているんだ? 貴様は――」


 俺は倒れ込んでいる皆月の腹にアイテムボックスから取り出したグレートソードを突き刺す。

 

「まったく――、何を面白いことを言っているんだ? なあ? なあ? なあ?」


 俺はグレートソードの柄を片手で掴んだまま刃先を回転させる。

 内臓がブチブチと潰れる音と背骨が断ち切れゴリゴリという感触が手に伝わってくる。


「ごふっ! な、なんで……、ここまでされるようなことを私は……」

「なあ、皆月! てめー、俺に虫を食わせた事があったよな?」


 俺は、少し距離が空いたところに蜘蛛の巣を作っていた蜘蛛をダガーで刺し、雷属性の魔法を応用し手物に引き寄せる。


「そ、それは……」

「ちょっと虫のテイスティングと洒落こもうか!」

「やめてっ! やめてよ!」

「ハハハハハハハッ!」


 何たる愉悦なのか! 

 これが――、こんなやつが! こんな泣いて許しを請うような雑魚に! 3年間も、虐められていたかと思うと……。


「とりあえず喰えよ!」


 俺は手にしたダガーを皆月の口の中へと突っ込む。

 もちろん刃先には蜘蛛がついたままだ。

 そしてダガーは皆月の咥内を易々と切り裂き――、舌を貫通し、刃先は喉迄貫通する。


「ゴボッゴボッ」

「汚ねえなあ」


 血の泡を口から吹く皆月の顔を右足で蹴りつけながらダガーを引き抜き、皆月の顔を両手で掴んだまま無理矢理、蜘蛛を食わせる。


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