第206話 王都リンガイア(5)
ガタゴトと揺れる幌馬車の中。
手先がブレるが、そこは得たばかりのスキル「バランス強化LV10」で何とか対処する。
「カズマは何をしているのですか?」
「ん? 新しい装備を作っている」
「装備ですか?」
「ああ。これから魔王軍と戦っていく上で、色々と装備のバリエーションというか、追加装備は必須だからな」
俺がゲームをしていた時代のアルドガルド・オンラインでは、チートに近いガチャ課金アイテムがゴロゴロとプレイヤーが開いていた露店で販売していた。
そして、そういう装備がデフォルト装備として成立していた以上、末期でもあった。
ただし、現在の異世界ガルドランドは若干趣旨が異なる。
何故ならアルドガルド・オンラインよりも前の時代の世界の可能性があるからだ。
だからこそアルガルド・オンラインの運営が開始した時の事を思い出して、あまり気にしていなかった。
そうが……、アルドガルド・オンラインはサービス当初は強いモンスターが居なかったという事実と現在のモンスターの質の差分を。
だが、先のエイラハブの戦闘を経て多少は考えを改めた。
それは、神が関与していた事実だ。
以前から、兆候はあった。
四属性を司る古竜が存在していたという事実。
俺は以前から、ゲーム上では設定で存在していた四竜に関しては流していたが、よくよく考えて見れば魔王四天王と最初に戦った時点で気が付かなくてはいけないことだった。
だからこそ、装備強化を進めている。
ただでさえ、アルドガルド・オンラインの末期のキャラの強さに、現在の俺のステータスやレベルは追いついていないのだから。
「カズマに頂いた装備では足りないのですか?」
「足りないというか、これからのことを考えると強化はしておいた方がいいと思っている」
「やっぱり魔王軍とカズマは戦う予定だからです?」
「まぁ、そうだな……」
少なくとも、俺を虐めていた最後の一人である金子隆を殺すまでは、俺の戦いは終わらないし、魔王軍に堕ちたのなら大義名分もある。
「主! 見えてきたぞ!」
「到着か?」
4属性吸収の指輪が完成したところで、幌馬車の外から声が聞こえてくる。
「エミリア、プレゼントだ。それとリオンにもな」
「カズマはいらないですか?」
「ああ、俺は大丈夫だ」
「マスター。ありがたくいただきます」
二人共、ダイヤのような原石が輝く指輪を人差し指に通す。
それを見たあと、俺は幌馬車から出る。
「主、王都が見えてきました!」
たしかに、前方には大きな建物が見えてきた。
それは間違いなく王城だろう。
そして、城壁の外では戦闘が繰り広げられている事から王都が陥落して無い事は容易に察する事ができた。
「イドル!」
「主、なんでしょうか?」
「これをつけておけ」
イドルの分の指輪を放り投げる。
それをイドルは空中で受け止める。
「婚約指輪ですか!」
「違う! 戦闘で有用な指輪だ。戦う前に装備しておけ」
「はい……」
「さて、到着すると同時に戦闘とか、休ませてくれないものだな」
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