第165話 砂上の戦闘(24)

 それと同時に、視界内のパネルの中を操作していく。


 ――『話術LV1』を進化させますか?(y/n)


 とりあえずLV10まで上げておく。


 ――『話術LV1』を『話術LV10』まで進化させました。


 開いていた半透明のプレートにログが流れるのを確認してから、スキル一覧を確認する。


スキル


『片手剣LV10』

『投擲LV10』

『イーグルアイLV10』

『状態異常無効化LV10』

『マルチロックLV10』

『自動追尾LV10』

『肉体防御LV10』

『騎乗LV10』

『クリエイターLV10』

『錬金術師LV10』

『付与術師LV10』

『話術LV10』


 スキルを選択してレベルを上げるだけで話術が上がるとは、まるでゲームだなと内心では苦笑しながら、目の前に居るファウストを注視する。


「……分かりました」


 渋々と言った様子だが、ファウストは俺の願いを聞き入れてくれたようで頷く。

 話術というか相手の意思決定にまで、スキルが影響を及ぼすことを考えると、俺のスキルは、かなり強力というか……、あまりにも使い勝手が良すぎる事に、内心恐怖を覚える。

 普段はOFFにしておいた方がいいだろう。


「では、ファウスト。よろしく頼む」

「はい。それよりも天井ですが――」

「それは、俺が修理しておくから、ファウストは戻ったあと俺の事は黙っていてくれ」


 コクリと頷いたファウストを書庫に下したあと、俺は天井を土魔法で補修したあと、兵士団長と対話した建物へと向かう。

 

「やはり、人影は殆どないな」


 冒険者と兵士の姿――、あとは商人の姿はあるが一般人と思わしき存在は確認できない。

 あとは、娼館が運営されているのか肌の露出が多い女性が街頭に立っているくらい。


「――さて……」


 俺やダルアが案内された建物に到着する。

 気配は確認出来る事から、建物の中には人は何人かいるのだろう。

 

「まずは情報収集だな」


 そうなると、マシューに直接的に話を聞くのは避けた方がいいだろう。

 アイツの言動から、黒幕の可能性は高そうだからな。

 

「……となると」


 俺は視界内のアイコンからMAPを選び起動させる。

 そして、MAPに表示された光点の中から、ベルガルという老兵を選び選択し、居場所を特定する。

 幸い、建物の中に居り、ベルガル以外の周囲には人影はないようだ。

 気配を消しながら屋根上から、煉瓦作りの壁へと移動する。

 雑な作りがされているからなのか、壁の煉瓦を掴みながら移動することができる。

 おかげで近くの窓から難なく建物の中に侵入し、音を立てないようにしながらベルガルが居るであろう部屋の前に到着した。


 そっと扉を開けると、部屋の中は薄暗く椅子に座り机に向かっている老兵の後ろ姿が目に映る。


「何者だ?」

「カズマだ」


 まだ数メートルの距離があるというのに、俺の気配に気がついた事に驚いた。


「会いにくるとは思っていた」

「そうか」


 どうやら、俺が接触してくることは、このベルガルという老兵は想定内だったようだな。


「まずは室内に入ったらどうかね?」

「そうだな。廊下にいつまでも居たら流石に他の兵士に気がつかれるかもしれないからな」


 俺は肩を竦めながら答えつつ室内に入る。


 

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