第325話 富士山麓事件(2)
東京行きの新幹線に乗ったまま、静岡駅を超え――、東京駅に到着したあとは、総武線に乗り換える。
結局、富士山に行くことは後回しすることにした。
まずは現状の自身の立場を確認することが必要だと考えたからだ。
総武本線の終点でもある千葉駅で降りたあと、空腹を感じたので改札口隣で営業している立ち食いうどんで食事をする。
そのあとは、駅の外へと出た。
「これは――」
千葉駅構内を歩いていたことから分かっていたが、やはりと言うか……、そこは改築工事前の千葉駅の光景が広がっていた。
「やはり……。時間が撒き戻っていると考えた方がいいのか?」
妙に冷静な自分に少し驚きながらも、自宅へと向かう事にする。
内房線に向かうために切符を購入し3、4番線のホームから君津駅行きの電車に乗る。
平日という事もあり、電車の中は空いている。
おかげで席に座ることが出来た。
対面座席に座ったあと、体を窓のある壁に預けて目を閉じつつも、ノートパソコンの入れてあるバックは、足元へと移動させる。
しばらくして電車は走り出す。
そして、10分ほどで自宅のある蘇我駅に到着した。
蘇我駅ホームから階段を上がり改札口を抜けたあと、ゲームセンターのある左出口側へと向かったあと、階段を下りる。
そこから、私立高校のバスが停まっているのを横目に見ながら右手に線路を見つつ線路沿いに歩くと左手にタクシー会社が見えてくる。
しばらく歩くと、踏切のある場所。
踏切を超えて5分ほどで左手に銭湯が見えた。
「そういえば、俺が引っ越してから、銭湯が潰れて駐車場になったんだよな……」
在りし日の記憶。
懐かしい思いが胸中に広がっていく中で、俺は歩き出す。
工業高校手前の――、ゲームセンターが目に入ったところで、横道に逸れて小道を歩くと左手に公園が見えた。
あとは、公園を左手に曲がれば、すぐに自宅がある。
そう思い、歩き出して公園を曲がったところで俺は足を止める。
「――ど、どういうことだ……」
俺が高校生時代に住んでいた一軒家が――、一軒家であった場所が更地になっていた。
しかも売地と看板が立っている。
思わず俺は右手で掴んでいたビジネスカバンを落としてしまうが、あまりにもあまりな光景に驚いていて気にする余裕はなかった。
「――俺の自宅が……、おやじとおふくろと住んでいた実家が……ない……?」
そう茫然と呟いてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます