第324話 富士山麓事件(1)
「ああ、ありがとう」
ノートパソコンとモデムを現金一括で購入したあとは、ノートパソコンを持ち運びできるビジネスカバンを購入。
箱は店側で処分してもらったあと、店から出た。
近くのネットカフェに入り個室を借りたあとセットアップを済ます。
「――さて……」
ネットにダイヤルアップで接続する。
ネットへの接続に対して時間的制限はあるが、これで移動しながら調べものができる。
大阪駅に到着したあとは、関東の自宅へ戻るための東京駅行きを新幹線チケットを購入する。
新幹線に乗り込む前に、新聞を売店で購入することも忘れない。
「ここが俺の席か……」
新幹線には、営業時代によく乗ったが、30年近く前の新幹線には乗ったことがないので新鮮だ。
決められた席に座りしばらく立つと新幹線は走り出す。
加速する際に、多少のGは感じるが、それは本当に些細なモノ。
新幹線が本格的に速度を上げていく中で、ネットに繋いでいた回線が切断される。
この辺は、まだ通信技術が未完成な当時の日本のネット環境らしい。
幸い、隣の席に座る人間はいなかったので新聞を広げて情報を確認しようかとすると――、
「お弁当、お茶は如何ですか?」
そんな声が聞こえてきた。
視線を声がした方向へ向けるとお弁当やスナック菓子、飲み物をカートに載せて運んで販売している女性駅員さんの姿が目に入った。
そこで朝から何も食べていないことに気が付く。
情報収集のための端末購入や移動のために意識を割いていたので、食事が後回しになっていたことに。
「すいません、お弁当をお願いします」
俺は近づいてきた女性駅員さんに話しかけると、彼女は一瞬だけ固まる。
「あの……学生さん?」
「あ――、今年、高校を卒業して……上京する予定でして――」
「そうなのですね。それで、どのお弁当を?」
「焼肉弁当で」
「はい」
「2個お願いします」
俺は、聖徳太子が書かれている一万円札を財布から取り出し渡す。
「あとは、お茶も」
「分かりました」
白い陶器を手渡される。
もちろん湯飲みも。
ペットボトルじゃないのか……。
女性駅員から手渡されたお茶が入った白い陶器? 急須と弁当を渡されたあと、支払いを済ませると、女性駅員は別の客へと足早に去っていった。
食事を済ませたあとは、再度、お茶の入った陶器を回収しにきた売り子さんに返却をする。
そのあとは新聞で、日本の現状を調べるが特に相違点などはないように見えるが……。
「――ん?」
俺は新聞の一文で目を止める。
そこには、富士山山麓で行方不明者が多数出ていると書かれている。
さらに明らかに人の姿ではない化け物が目撃されているとも。
「こんな事件、俺が高校生の時にはなかったよな?」
新幹線は袋井を超えたばかり。
「どうしたものか……」
まずは自宅がどういう状況なのか確認しておきたいが、富士山麓だと静岡県であり新刊の通り道ともいえる。
通り道なら途中下車して調べるというのも手だろう。
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