第198話 エピローグ2(2)

「そういえば、カズマはコレからどうするんだ?」

「これから?」

「ああ」


 肉塊となった元・勇者を見て表情というか顔色を悪くしたベルガルが頷く。


「普通に借金していたから受けた仕事が終わってないからな」

「それは、魔王軍を倒すという依頼か?」

「まぁ、そんなもんだ」


 肩を竦めながら返答する。


「それより、ベルガル」

「何だ?」

「少し頼みがあるんだが、馬車を一台でいいから都合をつけてくれないか? リーン王国の王都まで行くのに足が無いのは移動が不便なんだ」

「……なるほど。つまり、王都に行くことも依頼に含まれているということか?」

「それに近いな」


 全てを話す必要はない。

 とりあえず、俺は足だけ確保できればいい。


「分かった。すぐに用意させよう」


 ベルガルは、すぐに物資が乗った幌馬車から荷物を降ろし始める。

 荷物と言っても弓矢や武器の類であったが、食料品は一切、見当たらない。


「まったく」


 俺はアイテムボックスから、城塞都市デリアで購入した水や食料を取り出す。


「ベルガル、兵士や冒険者には英気を養ってもらった方がいい。それでなくても戦闘をしたんだろう?」


 俺がアイテムボックスから出した水と食料。

その量は、ここに居る冒険者や兵士達が一日かけても処理できないだけの分があり、それが積み上げられている。


「こ、これは……。まさか上位冒険者になると渡されるというアイテムボックスか?」

「まあな」


 俺は曖昧に答える。

 正直、出した水と食料は、俺達の虎の子だが――。


「本当にいいのか?」

「ああ。その代わり、幌馬車に積んである予備の武器や防具が欲しい」

「……分かった」


 少し考えたベルガルは頷き答えてくる。

 ベルガルも考えたのだろう。

 大勢の兵士や冒険者の食料や水が無いことに。

特にここは砂漠の中。

まして商人たちがいない状態だ。


 商談がまとまり、多くの武器や防具をアイテムボックスの中に突っ込んでいく。

 俺は兵士や冒険者からありたっけの余っている武器や防具を受け取りながら、エミリアの方へと視線を向けると、ベルガルがエミリアに話しかけている場面であった。


「エミリア殿で宜しかったですかな?」

「はい」

「私は、ベルガルと言います。この度の御助力は、獣人国ワーウルフの姫君であるエミリア殿の存在が大きかったと、カズマ殿から聞いております」

「え?」


 エミリアが俺の方へと顔を向けてくる。

 慌てて俺は話を合わせるようにとジェスチャーを返す。


「――は、はい」

「そうでしたか……」


 俺の身振り手振りを理解してくれたのか、戸惑いの表情を見せながらもベルガルに話を合わせていくエミリア。

 そしてエミリアの話が進むにつれて、好奇心や猜疑心を向けていた兵士や冒険者達の視線も軟化していく。

 さすがに自分達の命を救ってくれた獣人を恨むまで恩知らずではないということか。






 

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