第298話 王墓ダンジョン(13)
首を鳴らしたあと、俺は階段を一気に駆け降りる。
そして広間に到着する前に、ダメージ半減・攻撃力増幅魔法・防御力増幅魔法・加速度強化魔法をかけてから、階段を下り切る。
それと同時に――、
「無属性魔法LV4 スロー 連打!」
俺が発動した相手を鈍足化させ、攻撃速度を減退させる魔法は、俺自身の高いステータス補正が入ったことで、ファイナル・デス・ナイトの移動速度を限りなく落とす。
さらに、ギリギリの距離まで近づいてきたファイナル・デス・ナイトに向けて――、
「無属性魔法LV4 ウェポンブレイク!」
相手の攻撃力も劣化させる魔法を発動。
俺のステータスにより強化させた渾身のウェポンブレイクが――、錆びたツーハンドソー度がファイナル・デス・ナイトの頭上から降り、ファイナル・デス・ナイトに刺さると同時にガラスが砕けたようなエフェクトと音がダンジョン内に鳴り響く。
「よし、成功だ!」
俺は距離を取りつつ、ミスリル・チェーン・ソードを左手で振るうと、ファイナル・デス・ナイトの身体に巻き付けるとダンジョン内の床にミスリル・チェーン・ソードを突き刺す。
「グギギギッギ」
ファイナル・デス・ナイトが、意味もない叫びを上げると同時に、デス・ナイトが5匹生み出された。
「まったく厄介な敵だ」
俺は、フルヒールを連打しながら、デス・ナイトの集団から距離を取りつつ一匹ずつ始末していく。
「コイツに召喚されたデス。ナイトって、何も落とさないんだよな……」
そうゲーム内では。
それでも倒さないとファイナル・デス・ナイトを倒すときに絶対に邪魔になる。
横やりを入れられたら、それこそファイナル・デス・ナイトの盗伐どころではなくなる。
30秒ほどで5体のデス・ナイトを屠ったところで、ファイナル・デス・ナイトへと手の平を向ける。
「火魔法LV10! エクスプロージョン! 連打っ!」
焦点温度1億度とも言える莫大な熱を生み出す炎の魔法。
その連打により、ファイナル・デス・ナイトの鎧を一瞬にして消し飛ばす。
更に連打! 連打! 連打! 連打!
次々と鎧が蒸発していき、ファイナル・デス・ナイトは幾つかのアイテムを床に散らばらせると共に爆散して消し飛んだ。
「――ふう。とりあえず倒し方が、ゲーム内と同じで助かったな……」
アルドガルド・オンライン中期に実装されたファイナル・デス・ナイトは、一言で言えばチートだった。
当時、LV80付近が最高だったプレイヤーで討伐に向かったことがあった。
その時は、100人近いプレイヤーが集まった。
だが! その時は、全滅した。
ただゲーム内――、とくにMMOは時が過ぎれば過ぎるほど過去のネームド・ボスがプレイヤーと比べて相対的に弱くなる。
そして、長い試行錯誤の上にファイナル・デス・ナイトを倒す方法が編み出された。
それは、デバフをかけまくった上で、相手を足止めして、高火力魔法の連打で倒すというプレイヤーの技術も何も必要ない脳筋な倒し方だった。
「まぁ、魔力量の問題があるから、ごり押しが出来るかどうかと聞かれれば難しいからな」
俺は、エクスプロージョンにて消し飛ばしたファイナル・デス・ナイトの残骸をアイテムボックスに入れて一息つく。
正直、ファイナル・デス・ナイトは近づかなければ、そこまできつい相手ではない。
ただ前衛がファイナル・デス・ナイトに近づいて戦う理由は、魔法や弓矢では高いダメージリダクション効果を持つファイナル・デス・ナイトの防御力を突破できないからであった。
「ふう……」
床に散らばった全てのアイテムをアイテムボックスに入れたあと、俺は階段を上がる。
「エミリア」
「カズマ! 無事でしたか?」
「ああ。無事だ」
「本当に大丈夫ですか? 怪我もありませんか?」
「大丈夫だから、安心してくれ」
「……わかりました。少し休んでから向かいますか?」
「――いや、このくらいなら問題ない。先に進むとしよう」
「はい」
姿を消したままのエミリアを連れて6階層から7階層へ降りる階段に足を乗せる。
そして、7階層に到着した。
「やっと7階か……」
視界に表示されているコンソロールパネルには、午後16時と表示されている。
夜になるのは2時間後。
2時間後からは、不死系のモンスターが多いワールド・オブ・ダンジョンでは、モンスターの強さが跳ねあがる。
まぁ、すでにボスは全部倒したから問題ないが……。
「エミリア。もうボスは居ないと思う」
「そうなのですか?」
「ああ。だから、とりあえず道のりを急ぐとしよう。あまりダンジョン内にいるのも気が滅入るし体にも良くないからな」
「分かりました」
7階層からも出てくるモンスターはケルベロスとサイクロプス、グールにスパルトイと言ったモンスターで、大半のモンスターが範囲攻撃をしてくる。
その中で雑魚狩りをしながら、時折、落ちるDROP品や死体をアイテムボックスに入れつつダンジョン内を歩く。
ただワールド・オブ・ダンジョンは、基本的に一本道なので、そこまで時間が掛からずに魔法陣の前に到着することが出来た。
「カズマ? この魔法陣は?」
「テレポート魔法陣だ。最後の階層である8階層に飛ばしてくれるんだ」
「そんなモノがあるのですね」
声からしてエミリアが驚いたのが分かった。
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