第27話 港町ケイン防衛戦(5)

「……」


 俺は、思わず無言になる。

 理由は、町や城などをモンスターが襲う場合に、それを撃退するのは既に一人では対処不能な多人数型防衛攻略戦――、通称で言う所のレイド・バトルになるからだ。

 

 理由は簡単で、町や城下町などは、外に面している場所が広い。

 つまり、一人では守り切れないのだ。

 

「カズマさん? 大丈夫ですか?」


 ソフィアが、俺の顔を覗き込みようにしてみてくる。

 大きな茶色い瞳に吸い込まれそうな感覚があるが――、それは俺が女性に対して殆ど免疫が無いからだろう。

 

「大丈夫だ。それよりも、モンスターが襲ってくる可能性があるってのは本当なのか?」

「おそらくは――」

「だが、俺が倒したストーンゴーレムは、外を徘徊していただけだが……」

「そうなんですか?」

「ああ」


 俺の話を聞いたソフィアは怪訝そうな表情をする。

 何かあるのか?


「そうしますと……、もしかすると……」

「何か心当たりがあるのか?」

「はい。普通、ダンジョンから出てきたモンスターは、人に害を及ぼすという名目な目標があって襲ってきます。それをしないという事は――」


 なるほど、何となくだが、何を言いたいのか理解した。


「つまり攻撃目的が定まっていないということか? だが、そうなると妙じゃないのか? 攻撃目標が定まっていないのに、ダンジョンで生み出されるモンスターが……」


 そこで俺は、思い出す。

 これと同じ状況が、アルドガルド・オンラインにもあったことを。


「誰かが指揮している……、もしくはモンスターを先導している連中がいるってことか……」

「そうなります。ただ、相手は――」

「そうだな」


 主犯格の相手が分からない以上、頭を叩いて何とかするという方法は取れない。

 それに何より主犯格を倒した後にモンスターが何もしないのか? と、言えば違うだろう。

 主犯格が押さえていた攻撃目的が、今度は明確に人間に代わるだけだ。

 厄介なこと、この上ない。


「とりあえずアレだな。まずは戦力集めをしないとな」

「戦力集めですか……」


 目が泳ぐソフィア。


「言いたいことは分かる。今のケインの冒険者たちの実力はやばいんだろう?」

「はい……」

「――なら退役した冒険者や軍人に招集をかけて自警団を作るしかない」

「そんな事、国が許す訳が……」

「この際、仕方ないだろう。それとも町が滅んでしまっていいのか?」

「困ります」

「よし、ならこうしよう。表向きは冒険者ギルドからモンスター討伐依頼をかけるんだ。それも高額でな。――で、集まってきた連中に事情を話し自警団を組織する。だが――、あくまでも、それはモンスターの討伐って名目にしておけばいい。依頼は、モンスター討伐だからな。やっている業務は今までとは変わらない」

「つまり、表向きと裏を分けて軍を編成すると?」

「そうなる。とにかく時間がないなら急いだ方が良い」


 俺も、急いでエミリアの元へと向かう為に踵を返す。


「カズマさんは、どこに?」

「ちょっと野暮用だ」



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