第77話 さあ、報復の時間の始まりだ!(8)
「何をしている……んだ?」
何故、この女を――、皆月茜を助けるのか……、その行動が理解できない。
それに何より、リオンは何をして――。
「リオン!」
「マスター。お呼びですか?」
皆月の腹の上に馬乗りになっている俺の横にリオンが現れる。
「どうして、エミリアが此処にいる?」
「奥方様が来たいと言いましたので」
「何?」
「マスターの命令は、奥方様を護衛しろという内容でした。それ以外には命令は受けていません」
そのリオンの言葉に、俺は「たしかに」と思いつつも、苛立ちが募る。
「貴様っ!」
「カズマ……」
右手を、リオンに向けたところで、エミリアが俺の名前を呼んできたことで、俺は視界内の魔法欄を開き魔法を選んでいたカーソルを止める。
「なんでだ? 何で俺の邪魔をする!」
「そうではないです」
「……なに?」
俺は、ダガーの柄を左手で握ったまま――、そして……、それを意識したところで、ダガーの柄を強く握りエミリアの細腕から刃先を抜く。
「――ッ」
声にならない痛みを押し殺すエミリアを見て、俺はサーッと血の気が下がっていく感覚を覚え「ヒールLV10」でエミリアの傷口を塞ぐ。
「すまない。だが――、どうして……、俺の邪魔をした?」
「邪魔はしていません」
「――なら、どうして! このゴミを殺そうとしたのを邪魔した?」
「カズマ。あなたには同郷を殺すようなことを――、そのような業を背負わせたくないからです」
「……何を言っている? これは復讐だぞ? 正当な権利だ」
「それでもです。むしろ、このような者を殺して何になりますか? たしかに一時的に気が晴れるかも知れません。ですけど、同じ種族同士が互いを殺しあえば、一線を超えてしまいます。一線を超えればタガが外れてしまい、それはもう、別の考えになってしまいます」
何を、何を言っている?
こいつは俺に殺されるだけのことをしたんだぞ?
生きている価値すらないゴミだ。
――なら、殺しても問題ないじゃないか。
それをどうして止められないといけない?
この憤りを! 怒りを! どこにぶつければいい!?
「煩い……」
「カズマ」
「これは、俺と、この女の問題だ! お前には関係ない! リオン、命令だ! エミリアを連れて距離を取れ!」
俺の命令に一切動かないリオン。
その様子に俺は、さらに苛立ちを募らせる。
「リオン! 聞いているのか!」
「マスター、人間のことは良く分からないが、その者を殺した程度でマスターの怒りは収まるのか?」
「――なに?」
「妾ならば、もっと残酷に! もっと効率的に! 恨みを晴らすことが可能だが?」
「……ほう」
「リオンさん!」
「奥方様よ。そのサキュバスクィーンとマスターがどのような因果関係を持っているのかは知らんが、マスターが、そこまでするのなら、余程のことであろう。なら妾は、マスターの要望を汲み取り行動する。それが、マスターと妾の繋がり」
「――で、リオン。その提案というのは?」
「おそらくは奥方様も納得されるであろう内容だ。まずは――」
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