第281話 竜神族にクラスチェンジだと!?
「マスターが」
「ご主人様が」
「「決定されたのでしたら、それに従います」」
イドルとリオンの声が重なる。
「悪いな」
「――いえ。ただ何かあれば、この国を滅ぼしても?」
「俺は命令するまでは止めろよ?」
「分かっています」
イドルがにやりと笑みを浮かべる。
「妾も、その際には――」
この二匹は、俺が居なくなったら大変なことになりそうだ。
――2時間ほどすると、エミリアが戻ってきた。
顔色からして、随分と疲れているのが見て取れる。
「ただいまです。カズマ」
「エミリア、おかえり。交渉は、随分と長引いたようだな」
「はい。ただ、カズマが力を見せてくれましたので、お母様を説得させるのは思ったよりも楽でした」
「そうか……」
「はい! それよりも、明日にカズマの身の証を立てるとのことです。謁見の間に10時に来て欲しいと」
「そうか……。――で、俺の身の証だが、どういう立場にする予定なんだ?」
「えっと……。竜神って事にしました!」
「竜神?」
「はい。四大龍のうち2龍を従えていますので龍族と言う事にしました!」
「ふむ……。龍族ね」
「どうかしましたか? カズマ」
「――いや、エミリアと俺が結ばれる方法としては、それが一番良いということだろう?」
「はい。獣人族ではありませんが、人間族よりは、その方がいいと――」
「ふむ……」
まぁ、ありと言えばありだな。
竜神というのは、アルドガルド・オンラインには出てこないが、ドラゴンナイトというドラゴンに変身できるキャラクターは追加された事がある。
それを考えるのなら、良い点をついていると言えるだろう。
「それにしても……エミリア」
「はい」
「かなりエグイ説得をしたか? 俺を竜神にしてまで、旦那という立場を守ったという事は――」
「カズマが、この国の王になった方が良いと思います。だって、よくよく考えてみたら、傭兵として雇われるよりも、国王としての采配を持った方が、出産後の育児も良いと思いますから」
「……ふむ」
俺としては、傭兵として雇われた方がいいと考えていたが、それは俺が人間族という種族だった場合だ。
竜神族ならば、そんなのは通りこして何でもなる。
何せ、竜神は四大龍を全て纏める最強の龍と言う事になっている。
ゲーム上では。
たあし、アルドガルド・オンラインのサービスが始まってから20年以上、そんな龍は実装されたことはないが。
「まぁ、子供のためなら国の一つや二つ貰ってもいいか」
運営は大変だと思うが、この世界は力が全てのところがあるからな。
「それにしても竜神という存在をエミリアは知っているのか?」
「はい。四大属性、火・水・土・風。全て四大属性を操ることが出来る龍だと伝承ではあります」
「なるほど……」
アルドガルド・オンラインのサービスが始まる、この世界でも竜神という存在があるのか……。
「カズマも竜神という存在を知っているのですか?」
「まあな」
「人間族には、殆ど出回っていない獣人族の一部だけが知っている御伽噺のようなモノなのですが、流石はカズマです! 知っているなんて!」
まぁ、俺はゲーム内でNPCが話していたテキストを何度も読んでいたから知っていたんだよな。
「とにかく、明日は竜神ってことで話は通すってことだろう?」
「はい! あとは、カズマがお母様から力づくでもいいので国の権力を奪ってください!」
「別にしなくても問題ないだろう?」
必要なのは、国の中枢を動かしている貴族や官僚を手懐けることだ。
どんな手を使ってもな!
――翌朝は、用意された豪華な朝食に舌鼓を打つ。
「結構、金がかかっているよな」
「カズマ、手心を加える必要はないですからね!」
「エミリア」
「はい?」
「母親と喧嘩でもしたのか?」
「カズマを悪く――、私の旦那様を悪く言ったのですから! 仲が悪くなるのは当然です!」
「――な、なるほど……」
これは、かなり母親と拗れているな。
まぁ、俺には若干関係はあるが、二人の仲を持つのか? と、聞かれれば答えはNOだが。
エミリアと共に謁見の間まで近衛騎士に案内されたところで――、
「――ワーフランド王国、第一王位継承権のエミリア・ド・ワーフランド様」
謁見の前へと通じる扉が開くと同時にエミリアの身分と立場が明かされる。
どうやら、向こうはこちらの秘密を隠すつもりはないらしい。
「――続いて! 魔王軍討伐に多大なる貢献をしているカズマ」
「俺のことだな」
「はい! ――では、参りましょう。カズマ」
「そうだな」
エミリアと共に、俺は謁見の間に入る。
謁見の間には多くの獣人国以外の王侯貴族が集まっており、俺やエミリアの方へと視線を向けてきていた。
視線には好奇心が多分に含まれているのを感じる。
まぁ、一人で数千の軍を壊滅させたのだから当然と言えば当然だが――。
「カズマ殿、この度の力を示すという儀式をクリアし、承諾したことを宣言します」
何を承諾か? と、貴族たちが噂を建てるが、どれでも的外れもいいところだ。
「それと共に、伝説上の竜神様に対して、失礼な態度を取った無礼をお詫びいたします」
頭を素直に下げてくるエミリアの母親。
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