第231話 森のダークエルフ(4)
「分かった。それとだが――、お前達の中に村長というか……族長はいるのか?」
「――族長は、神聖なる大樹で座しているが……」
「ふむ……、もしかして族長はエウレカという名前じゃないか?」
「族長の名前を知っているのか? 外の人間が!? ――いや、本当に魔神なら……知っていておかしくは……」
どうやら、アルドガルド・オンラインで出てきたダークエルフの族長の名前そのままのようだな。
――と、なると気難しい性格というか厳格な考えを持っているダークエルフという設定も踏襲されている可能性があるか。
こちらに問題があるのだから、エミリアのことを考えると会合を持った方がいいな。
おっかなびっくりな様子で俺を見てくるダークエルフの女。
「俺の名前は、カズマと言う。Sランク冒険者だ。お前達の族長に謝罪を申し込みたい。会わせてもらえることは可能か?」
俺の申し出にダークエルフ達は顔を見合わせる。
「マスター。魔神たる御身が謝罪をする意味が分かりませぬ」
「リオン。下のモノが起した失態は、上のモノの責任だと言うことを理解しろ。そしてイドルは、俺の部下だ。つまり上司が謝罪をすることは当たり前だ」
「……主様!」
「調子に乗るなよ! イドル! 貴様のせいでマスターが頭を下げることになったのじゃぞ!」
「……わかっておる」
「カズマ。謝罪に行くのはもしかして……」
俺は頭を左右に振る。
いまの状況で、エミリアのことを知られるのは良くない。
「分かりました。カズマ殿の強さと、誠意を信じるとします」
「それは良かった」
「それでは、ダークエルフの村まで案内致しますので、付いてきてください」
「ああ。頼む」
「それとカズマ殿、私は、カレンと言います」
「カレン? リードリ―の娘のカレンか?」
「――え? 私のことも知っているのですか?」
「まぁ、音に聞こえたダークエルフ族のことなら、ある程度のことは知っている」
「なるほど……。我々のことを知っている人間が居るとは驚きです」
「そういえばそうだな……」
暗殺業をメインとして活動しているダークエルフ族の内情は、一般人が知る事は殆どない。
ゲーム世界でも王族ですら、一握りの人物が連絡をつけることが出来る程度の薄い繋がりしかなかった。
歩き始めたダークエルフのあとを、幌馬車をアイテムボックスに仕舞ったあと、付いていく。
「カズマ殿は、アイテムボックスの魔法も使えるのですか?」
「ああ、何か問題でもあるのか?」
「――いえ。アイテムボックスの魔法は、魔法の資質に長けたダークエルフやハイエルフの中でも、長命な者でも使えるかどうかのモノですので」
「そうか」
「はい。幌馬車を一台、丸ごと入れることが出来るなんてアイテム袋でも不可能ですから」
「なるほどな……」
そういえばゲームの時には、そんな設定はなかったな。
後ろからはリオンとイドルが馬の手綱を引きながら木々の合間を歩きながら付いてくる。
「カズマ」
「とりあえず、話の方針が決まるまでは、静かにしておいた方がいい」
思わずエミリアの名前を口に出しそうになったが、何とか喉元で呑み込みエミリアに答える。
事の問題にエミリアも理解したのか頷くと無言になる。
それから鬱葱とした森の中を歩くこと30分ほどで、急に視界が開ける。
「カズマ殿。ここからがダークエルフの集落の結界の中になります」
そうカレンが指差した方角には、洞窟がポカリと穴を開けていた。
どうやらゲーム設定の通り地下にダークエルフの集落があるらしいな。
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