第127話 3枚の冒険者ギルドカード

「それは、良かったです。それでは、新しい冒険者ギルドカードは此方になります」


 ソフィアが3枚の金色に輝く冒険者ギルドカードをテーブルの上に並べてくる。


「随分と用意周到だな」


 俺は思わず苦笑する。

 つまり、最初からSランク冒険者として登録する事は決定していたという事だろう。

 相手の手のひらの上で利用されるのは気に入らないが――、


「申し訳ありません。ただ、魔王軍を次々と倒している冒険者をDランクのままにしておくのは王国の一機関としても看過できない部分もありまして……。それに配慮するのもDランクのままでは――」

「つまり、何かあった時に莫大な貸し借りがDランクのままだと問題なるからエミリアをSランクにして、俺もSランク冒険者にしようとしたってことか?」

「いえ。エミリアさんの場合は、Sランク冒険者はほぼ確定でしたので――、城塞都市デリア全体を覆う程の解呪の魔法を使える担い手となると、聖女クラスになってしまう為……、仕方なくSランク冒険者に……」

「聖女クラスでは不味いという事か?」

「カズマさんも勇者ではないと公言されていたとか……」

「まぁ、そうだな」

「――ですので、聖女として認定するのは教会、しかも人族でもないので承認するのが難しいのです。ですが――、何の資格を与えないというのも国としては問題がありますので」


 その言葉に俺は溜息をつく。


 ――つまりだ。

 解呪の呪文を使った者が人間であるのなら、聖女認定していたと。

 ただし、人間ではないエミリアには聖女としての資格はない。

 だが、それだと何の管理下にも置かれていない状況だと問題になるから冒険者として登録をかけたと――、そういうことか。


「俺が勇者と名乗りでても聖女としては認定しないんだろ?」

「悪いな」

「申し訳ありません」

「お二人とも気にしないでください。冒険者として、そして市民権が頂けただけで私は嬉しいので」


 エミリアが良いのなら、それでいい。


「とにかく、下手な小細工は無しにしてくれ。こちらとしても色々と勘繰ることになるからな。こういう事は、信頼が命だろう?」

「分かりました」


 ソフィアが頭を下げてくる。


「――で、ソフィア」

「はい」

「この冒険者ギルドカードだが――」


 俺はテーブルの上に置かれている3枚の金色のカードを指差す。


「俺とエミリアの分ということで2枚だというのは分かるが、もう一枚は?」

「それは、あの小さな子供の分だ」


 ソフィアに尋ねたところで、ラムドが横から口を挟んでくる。


「リオンのことか?」

「ああ。あの子は、普通の子供ではないんだろう? 戦い方を見ていれば分かる。どう見ても俺より実力は上だ。――なら遊ばせている余裕は、今の冒険者ギルドにはない」

「そうか。ならリオンの分も貰っておくとしよう。とりあえず3枚とも、名前を入れておいてくれ」

「わかったわ」


 ソフィアが3枚のカードを手に取り部屋から出ていく。

 おそらく窓口で名前を掘りにいくのだろう。





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