第296話 王墓ダンジョン(11)
「そうなのですか。たしかに、威力を見る限りだと、相当なモノですものね」
「ああ。だから、ダンジョンから出たら、この武器については秘密な」
「分かりました」
あとで、エミリアの長刀にも何かしらの攻撃魔法を付属しておこう。
「じゃ、とりあえず次行くとするか」
「このまま向かっても大丈夫なのですか? 私は、4階までしか道は知らないのですが……。それにしても、次って……まだあるのですね」
「ああ。まだまだあるぞ」
「そんなにですか……」
俺は頷く。
さらに、ここのダンジョン――、ワールド・オブ・ダンジョンの厄介な点は夜になると、相当厄介になる点だ。
なので、さっさと攻略しておきたい。
出立して2時間ほどが経過したところで、迷宮エリアが終わり一本通路へと切り替わる。
「ようやく抜けたようだな」
俺は溜息をつく。
「これでダンジョンは終わりですか?」
「――いや、あと3階層ある」
「そんなに!?」
俺が知っているゲーム初期に追加されたワールド・オブ・ダンジョンなら、地下7階まで。
ただし、そうでないなら8階層まである。
まったく厄介だな。
俺は、天井を見上げながらそう思う。
天井には大きな穴がポッカリと開いており、その下――、床の部分も黒い穴がポッカリと口を広げていた。
どうやら連鎖的に4階にあったはずの祭壇が地下に落ちたらしいというのは分かる。
それが意図的なのかどうかは置いておいて。
真っ直ぐに続く通路を歩くと、下へと向かう階段が見えた。
ゲーム時代なら、ここまで10分もかからないのに、実際にダンジョンを歩くと予想以上に時間が掛かる事に面倒くささを感じる。
「階段を降りよう」
「はい」
「それとエミリア」
「どうかしましたか?」
「地下6階にはネクロマンサーというモンスターが出る可能性が高い。範囲魔法を使ってくるから、デス・ナイトの時と同じように距離を取っておいてくれ」
「分かりました!」
インビシブルリングで姿を隠しているエミリアが了承したのを確認したあと階段を下りた。
階段を下りた場所は、通路ではあったが、壁の両端に篝火が灯されていて、ダンジョン内だというのに灯りが確保できていた。
「――やっぱり……いたか……」
通路の向こう側――、距離としては目算として50メートル先に薄暗い灯りが見える。
そして、時折、垣間見える一つ目のボディビルダーのような見た目をしたサイクロプス。
その体表は緑色で一目で腐っているのが確認できた。
さらに、数が3体。
間違いなく6階層のボスモンスターが連れているグリーンゾンビサイクロプスの特徴のまんまだ。
「あれって……Aランク級の魔物のサイクロプスですよね? あんなのが、こんなところに生息しているなんて……」
Aランクのモンスターは地上ではレッサードラゴンと同等の強さを誇り、一匹で小さな村なら廃村にできる力を有している。
そして、そんなAランク級のモンスターに唯一対抗できるAランククラスの冒険者は、一つの冒険者ギルドに10人ほど基本的に滞在しているが、彼らではないと対処は難しいとされている。
「とりあえず、倒しておくか」
後ろから攻撃されても面倒だからな。
まずはグリーンゾンビサイクロプスに向けて、フルヒールを連打する。
それにより魔法抵抗力の低いサイクロプスは一瞬で装備していた棍棒だけを残して消滅する。
「――さて! ここからは忙しいぞ!」
俺は、視界内に多重にコンソロール画面を開くと、重複フルヒールを連打し、こちらへと殺到してくるゾンビ系の魔物を一掃する。
そして、最後に通路の角から現れたのは黒いローブを身に纏い、黒と白に点滅を繰り返す杖を持つ魔法師にて骸骨――、その名もネクロマンサー。
「ライトニングウェーブ!」
ネクロマンサーが、魔法のタメもなく雷属性魔法LV3のライトニングウェーブを放ってくる。
もちろん、それは範囲魔法。
「水属性魔法LV7 ウォーターウォール!」
俺が展開した水属性の水の壁は、ネクロマンサーが放ってきた雷属性魔法を吸収する。
それを確認した上で俺は頭上に手を上げてから振り下ろす。
「無属性魔法LV4 スロー!」
魔法を唱えると同時に、空中から金色の鎖が出現しネクロマンサーの身体を縛り付けて自由を奪う。
「ライトニングウェーブ!」
「水属性魔法LV7 ウォーターウォール!」
ただ魔法を阻止する事はできない。
阻止するためにはサイレンスの魔法をかける必要があるが、近くに寄ればスパルトイと言うドラゴンスケルトンウォーリアーの一ランク低いスケルトンを召喚されるからだ。
しかも、スパルトイはインビシブルリングの効果を見破る力を有している。
よって、こちらに近づけるわけにはいかないし、近寄る訳にもいかない。
「火属性魔法LV10 エクス・プロージョン!」
だからこそ! 遠距離魔法で仕留めることを選択する。
力ある言葉と同時に、大気中が光に埋め尽くされていくと、そのあとには大気中を満たした光がネクロマンサーの身体に収束していく。
そして、全ての光が収束したところで、ネクロマンサーの身体を中心にして光が弾けて爆発した。
爆発は、何かしらの壁がネクロマンサーを覆っているのか、衝撃はこちらには来ない。
ただし威力は相当高く、光が消えたあとネクロマンサーの姿は跡形もなく消滅していた。
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