第278話 報酬はきちんと出すぞ?
「どうも何も、いきなり突然、倒れたんだ」
まぁ倒れた理由は、何となく察しがつくが、そのことについて言及するのは野暮と言うモノだろう。
それに、今回は立ち合い人として役に立ってくれたのだ。
追い打ちをかける必要な無いだろう。
俺はアイテムボックスから、今回の報酬についてのイヤリングを取り出す。
「カズマ様っ! どいうことですか?」
「どうも何もない。それよりも――」
俺は鑑定スキルで、アイテムボックスから取り出したイヤリングを確認する。
――王家のイヤリング
性能
魔力防御力+20
物理防御力+20
最大体力量+20%
最大魔力量+20%
体力自動回復+2
アルドガルド・オンラインでは、鯖稼働から7年目に実装された装飾品アイテムで、かなりの価値ではあったが、いまの俺のスキルなら何個でも作ることが出来るので、今回の詫びも含めて、兵士に手渡す。
「こ、これは?」
「これを今回の詫びだという事で、シルフィエット王女殿下に渡しておいてくれ」
「それは、カズマ様が直接渡されればよろしいのでは?」
「――いや。色々あるからな。じゃ、頼んだぞ!」
俺は兵士の肩を軽く叩き部屋から出て、自分達が逗留している部屋へと戻った。
宛がわれている部屋に戻る間に、何十人もの城で仕事をしている侍女やメイドに警備を担当していた兵士をすれ違うが、誰もが、俺と視線を合わせずに逸らす。
「まぁ、当然か……」
何せ、レベリングのために半殺しと回復を繰り返していたからな。
ゲーム内では、モンスターをテイムする上では普通に行われていた行為に近くはあったが、実際問題、現実世界でするとイカれているよな……。
「今戻ったぞ」
俺たちに宛がわれている部屋に入れば、高く積まれた皿にイドルとリオンの姿が目に入った。
「マスター。相変わらず、凄まじい魔力の放出、流石ですじゃ」
「妾も、ご主人様の魔力に当てられてしまって、いつでもバッチこいです」
「二人とも酒でも飲んでいるのか?」
酒樽が幾つも室内に転がっているのを見ても間違いないだろう。
「妾は、そうではありません! ご主人様の力の一端を感じてしまい龍族として、強いオス――、ご主人様の稚児を授かりとうございます!」
「マスター! 我も!」
「少しは静かにしてような」
尚も騒ぐ二人をLV9の範囲系睡眠魔法のエリアスリーピングで強制的に寝かせる。
「魔法攻撃力が上がったからもしかしたらと思ったが、魔法抵抗力の高い四大属性龍にも状態変化魔法が一発で効くとはな……」
俺は、自身のステータス上昇における魔法の威力を確認しながら室内のベッドで横になり目を閉じた。
しばらくは、儀式の後始末で時間がかかるだろうからゆっくりしようと決めつけていたが――、
「カズマ! カズマ!」
「――ん? エミリアか」
目を開ければ、ベッドに両肘をつきながら俺を見降ろしていたエミリアの姿があった。
「はい! エミリアです」
「そうか……。それで、儀式の後片付けは終わったのか?」
「終わったというか……終了したというか……。その件も含めて、お母様が大至急、カズマと話をしたいと」
「俺と話ね」
何だか歯に着せぬ言い方をするエミリアに違和感を覚えてしまい嫌な予感がしてきたぞ?
こういう時の、俺の感って当たるんだよな。
でも、エミリアが起こしにきたのだから行かないわけにもいかないわけで。
「俺、どのくらい寝ていた?」
外を見れば、既に日は落ちていて外は真っ暗だ。
「えっと……たぶん5時間以上は――」
「そうか……」
システムログを確認すると、俺が最後にレベルアップしてから6時間近くが経過している。
どうやらシステム上的にも問題はないようだ。
「それじゃ行くか」
「あの、それよりもお二方が寝ているのは――」
エミリアが、困惑した表情で床の上に倒れているイドルとリオンを指さす。
「ああ。さっき強制的に寝かせたんだ」
「そうなのですか? 強制的って魔法か何かで?」
「そんな感じだな」
「そういえば、龍って、一回寝ると中々起きませんものね」
「そんな話もあったな」
相槌を打ちながら俺はエミリアと共に部屋から出て女王陛下が待っているであろう場所へと向かう。
そこは、以前に女王陛下と事前に打ち合わせをするために使った部屋であった。
部屋に通されると、室内の中央には大きな丸いテーブルが置かれており、その周りには20ほどの椅子が並べられていた。
まるで円卓の騎士達が、集まったとされる部屋のようだと心の中で呟きながら――、
「そちらへお座りください」
疲れた表情をしたエミリアの母親が、室内に入った俺に向けて椅子を勧めてきた。
「カズマ」
「分かっている」
エミリアに言われなくても分かっている。
今は、俺と商談取引を目の前の女王陛下は行いたいという事くらいは察することは出来る。
俺が椅子に座ったところで、室内で待機していた侍女が紅茶を入れると俺の前に振るえる手で置く。
だが、女王陛下が、侍女を嗜めるような真似はしない。
俺だって、文句を言うつもりはない。
俺に対して畏怖を持つということをしたという自覚はあったからだ。
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