第219話 王族同士の会談(1)

 ――謁見後。


 与えられた王城内の部屋に戻ったあと――、


「ああいう場所は苦手だな」

「そうですね」


 侍女が用意してくれた紅茶を口にしながら寛ぐ俺達。


「そういえばマスター」

「どうした? リオン」

「人族に、あそこまで言われていて何もしなくて良かったのですか?」

「何かした方が問題になるし、外交的にも致命的だからな。絶対に手を出すなよ」

「……分かっておりますが……」

「了解しております」


 やはり、相手が女王陛下と言っても俺が神である魔神と勘違いしているイドルとリオンにとっては、納得はできない問題だったのだろう。


「――ところで、カズマ」

「ん? どうした? エミリア」

「本当に私の手柄にしてしまって良かったのですか?」

「ああ、そのことか」

「はい」


 申し訳なさそうな表情で聞いてくるエミリア。


「一応、言っておくが、エミリアと出会うことが無かったら、俺にとって、この世界の人間はどうでもいい存在だったし、誰かを助けるという選択肢も存在していなかった」

「そうですか……、それって――、自惚れてもいいのですか? 私の願いをカズマが聞いてくれたから人を助けていると……」

「そうだな。エミリアが俺を救ってくれたからな。それだけのことだ」

「分かりました! これ以上、カズマの好意を確認することは、信頼を疑うことになってしまいます。私が、リーン王国の王女殿下との話を取りまとめてみます」

「そうだな。あとは任せた」


 俺にとって国同士の問題については、帝王学を習った訳でもないし、国を運営するための知識をもっているわけでもない。

 それに……、この世界での地位や名誉なんて欲しくない。

 第一、俺達、日本人を勝手に召喚しておいて何が勇者だ――、何が英雄だ――、自分達の問題は自分達で解決するのが筋合いだろうが。


 ――だから、俺には関係ないことだ。

 だけど、エミリアの為だから俺は戦っているに過ぎない。

 



 ――コンコン。


「どうぞ」


 扉がノックされると同時にエミリアが答える。


「失礼します。女王陛下が、エミリア王女との話を所望しております」

「分かりました。すぐに伺います。カズマ、行ってきます」

「ああ、しっかりな」


 俺は、視界内のシステムを確認しつつ、エミリアに返答する。

 俺達が謁見の間から出てきてから1時間少し――。

 思っていたよりも早く呼びに来たことに驚いたが、そこは議会制ではなく王族制度を有しているからだろう。

 トップが迅速に行動できて判断できるのなら、王族制も悪くはない。


「はい!」


 立ち上がったエミリアは、部屋から出ていく。


「良かったのですか? マスター」

「ああ。問題ない。それに、エミリアの護衛にはリオンが付いているからな」


 小さな幼女に化身しているリオンなら、相手も強く文句は言わないだろう。

 リオンが実力者だと分かっていたとしても、エミリアは一国の王女。

 護衛の一人は供だっていても問題ない。







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