第96話 城塞都市デリア(2)
「誰だ?」
「これは、アイゼン様!」
「うむ。連絡と時間稼ぎご苦労」
姿を現したのは女騎士。
身長は150センチちょいといったところか。
口調のわりにはちんまりとしているな。
そして何より――、大きな金色の瞳に鼻筋の通った顔立ちに小さな唇。
さらには、金色の髪を三つ編みにして後頭部で纏めているが、一目で分かる。
かなりの美人だということが。
そんな、かなりの美人な騎士が銀色の甲冑を鳴らしながら近づいてきて衛兵と話をしている。
それよりも……。
「時間稼ぎ?」
「そうだ。冒険者、貴様が来る事は早馬にてハイネ領主から報告がきている」
「……早馬で?」
「うむ」
「つまりハイネ領主が俺に何か用だということか?」
「その点を含めて、貴様には総督府に顔を出してもらう」
「普通に俺は、王都まで行きたいんだが……」
「その案は却下だ。さっさとついてこい」
「だが! 断る!」
「――なっ!?」
「俺は権力者に媚び諂うようなことはしないからな。俺に命令をしたいなら冒険者ギルドを通してからやってくれ。――あ、もちろん依頼込みでな。ただ、緊急クエストじゃない限りは冒険者への強制依頼は出来ないから、残念だったな」
俺は幌馬車の御者席に座り馬の手綱を操り幌馬車ごと町の中へと入る。
すでに町へ入る為の許可はもらったのだ。
総督府だか何だか知らないが、俺が行く必要性はまったくない。
そもそも、どうして長旅に立ち寄っただけの町で、他人の命令に従わないといけないのか。
「分かった! カズマ殿! 待ってくだされ!」
何か叫んでいるが俺には関係ない。
俺が操る幌馬車は城塞都市デリアの大通りを走る。
「銀の宿泊亭か」
幌馬車を走らせながら、いくつかの宿の看板を見て吟味していく。
その中で、赤い煉瓦作りの宿を見つける。
こじんまりとしていて4階建ての建物が多い中で2階建ての宿ではあるが、中々に興味をそそられたので、俺は幌馬車から降りると、エミリアも一緒についてくる。
「リオン」
「なんだ? マスター」
「宿泊ができるかどうか話をしてくるから、あとは頼んだぞ」
「了解した」
「じゃ、いくか」
「はい!」
俺とエミリアは宿の入り口から中へ入ると、すぐ左手側にカウンターがあり、10代後半と思われる女性が寝ていた。
「おい」
「ハッ!」
話しかけたことで慌てて顔を上げて俺を見てくる女性。
カウンターで寝ていたから気がつかなかったが、瞼を開けて俺を見てきている姿からして、思ったより年齢が若そうに見える。
おそらく12歳か13歳くらいだろう。
「宿泊したいんだが――」
「はい。宿泊ですね! え!? 宿泊ですか?」
「ああ、宿泊だ」
再度、確認してくる女の子。
「本当にうちに泊まってくれるんですか?」
「本当ですよ? 3人のお泊りでお願いしますね」
エミリアが、女の子に話かける。
すると、女の子は「久しぶりのお客さんです……」と、ポツリと呟く。
それを見て、俺は思った。
また面倒事に巻き込まれそうだと――。
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