第283話 お前が国王陛下になるんだよ!
元の姿に戻ったあと、バルコニーに降り立ち、謁見の間に戻る。
もちろん、その際にバルコニーから外を――、竜に変化した俺を見ていた連中の横を通り過ぎたが、誰もが恐怖と怯えと驚くなどの綯交ぜな感情を含んだ視線を俺に向けてきていた。
謁見の間に戻ったあと、俺は女王が戻ってくるのを待ち、口を開く。
「これで、いいだろう? 証を見せたことになったろう?」
「はい……」
玉座に座った女王が嘆息したあと、周囲の貴族や騎士、他国の有力者に王侯貴族を見たあと、口を開く。
「カズマ殿を竜神として我が国、ワーフランドは迎いれる事とする!」
さて――、これでひと段落ついたって感じだな。
「異論のある者はおるか?」
女王陛下が、周囲を見渡すが、自国の貴族で、たった今、見たばかりの竜というインパクトにケチをつけることが出来る者なんているはずもない。
「――では、我が娘エミリアよ」
「はい」
「竜神カズマとの婚約を、ここに認めることとする。よいな?」
「はい!」
勢いのまま、俺がこの国を守っても問題ないと――、誰にも文句を言われる前に、さっさと決めてしまう。
「カズマ様も、それでよろしいでしょうか?」
「ああ。問題ない」
「それと、それに伴い我が娘――、ワーフランド王国第一王位継承権を有するエミリア・ド・ワーフランドの伴侶である竜神カズマを、ワーフランドの新たなる国王とする!」
やっぱりきたか! と、思いつつポーカーフェイスを保ったまま思考する。
国を守るためには、武力というのは絶対に必要不可欠。
どんなに優秀な外交を有する国であったとしても、最終的には国の武力というのが、どれだけきちんと整っているかによって決まる。
それは現実世界でも同じことで、国を守るためには、俺を傭兵として雇うよりも、国王に据えた方がいいとエミリアの母親が考えたのだろう。
まぁ、実際、エミリアは王女殿下なのだから、遠くない未来、国を捨てない限りは、国に戻ってくるわけで、あとは俺の決断と覚悟だけだ。
「承知した。この国を竜神として、我が配下の水竜と地竜と共に、導いていこう」
最終的には、こうなる。
だからこそ、俺は決断し承諾する。
「それでは戴冠式は、私の娘エミリアと挙式を挙げてからとなります。各国の代表の方は、もし時間が許されるのでしたら是非に参加をしてください」
そのあとは、今後の予定について女王陛下が発言する。
そしてわずか10分ほどで謁見の間での話は終わると、次々と各国の王侯貴族が謁見の間から出ていった。
最後に、デリア要塞の冒険者ギルドマスターのラムドが出たところで、謁見の間には、俺と、エミリアと女王陛下と、護衛の騎士だけが残された。
「それでは、カズマ殿。娘を、よろしくお願いします」
「ああ。大丈夫だ」
「それとカズマ殿。娘と少し話がありますので――」
「そうか」
俺は、謁見の間から出る。
まぁ、母娘で何か話したいことでもあるのだろう。
それにしても――、
「(やっぱり見られているよな?)」
謁見の間から出て見れば、多くの王侯貴族が、俺が謁見の間から出てくるのを待っていたかのように視線を向けてきている。
「カズマ!」
「久しぶりだな! ラムド」
「ああ。それよりも、どういうことだよ? お前が――」
「その話は、今度だ」
「まぁ、お前の強さは冒険者を超越していたから何かあるのかと思ったが、それにしても秘密がでかすぎるだろ」
「気にするな」
「気にするって! 竜族って言えば、何かしらの見返りがないと矮小な存在を守らないだろ? それなのに……」
「それは普通の竜の場合だ。竜神は違う」
「まぁ、俺も竜神は良くしらないけどな」
「なら、問題ないだろ」
俺は肩を竦めると、ラムドの方を軽く叩いてから離れ宛がわれている客間に向かった。
客間に到着し部屋に入ったあとは、俺はイドルとリオンが床で寝ているのを確認しつつ、ソファーの上に座った。
「あー、マジで疲れた」
今まで、サラリーマンしかしてこなかったし、異世界に召喚されてからは勇者の御供として、そのあとは冒険者としてしか活動してこなかった。
つまり、人の上に立った経験がゼロなんだよなと思いつつ、
「まぁ、頑張るしかないな。エミリアのお腹にいる子供のためにも――」
――と、覚悟を決めた。
そして、テーブルの上に置かれているポットを手に取り、紅茶をティーカップに注いでから、口にする。
すでに冷えていて、渋みを感じる。
「――さて、結婚式は3日後か……。随分と急ぐよな……」
おそらく他国からの干渉を防ぐために急いで最短で3日後というところなのだろう。
それ以上掛かると他国から何かしらの干渉がある可能性がある。
それは竜神と宣言した手前、必ずだ。
竜神――、それはブラフではあったが――、それは既にブラフにはなっていない。
俺の強さで嘘が真になっている。
だからこそ俺という最大戦力をどうにかしようと策謀を張り巡らせてくる可能性が高い。
それをさせないための時間。
「まったく面倒だな」
俺は、ソファーの上に横になると目を閉じた。
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