第244話 王城での謁見(1)
「――で、俺はこれからどうなるんだ?」
「すぐに王宮まで案内させてもらおう」
ダリアが、そう答えてくる。
「それは重畳だな」
さて、どうやら王宮までの道筋は開けたようだな。
エミリアを切り札とすることもなく、獣人国ワーフランドの王都リベルタニアの中心部へと向けて騎士団に案内されるかのように、俺たちの幌馬車は移動する。
もちろん、幌馬車は水竜アクアドラゴンのリオンが引いている。
「カズマ、何だか注目されていますね」
幌馬車の荷台から、エミリアが、そっと顔を出すと俺に話しかけてくる。
「まぁ、幼女姿のリオンが幌馬車を引いていれば、目立つよな」
「マスター。大きな建物が見えてきました」
ダリアたち、詰所の兵士に王都内を案内されること20分ほど。
ほぼ直線だった大通りを抜けると目の前には、王都リーンよりにあった王城よりも一回り小さな城があった。
そして、煌びやかなセンスを感じさせるリーンの王城とは違って武骨な砦と言った方がいいような見た目で。
「ここが王城か?」
「はい! やっと戻ってこれました! これも、カズマのおかげです!」
「エミリアが頑張ったからだ」
俺たちが、こそこそと会話をしつつも幌馬車は、兵士たちに先導されて大きな門を抜けて王城の敷地内へと移動する。
「カズマ殿。到着致しました。すぐに謁見の間へと来て欲しいとのことです。このダリアが、案内致します」
「分かった」
「カズマ殿、あと、お付きの者もご一緒にとのことです」
「そうだな……。少し待っていてもらえるか?」
「? 分かりました」
俺の言葉に何かを察したのかダリアが距離を取ったところで、御者席から立ち上がり幌馬車の中へ入る。
「エミリア」
そう彼女へと視線を向けて名前を呼ぶ。
もちろん大声ではなく、小声で――。
「小声でなくても大丈夫ですよ? カズマ」
「そうなのか?」
「ワーウルフは耳が良いのです。おそらく、多少の小声では意味はありませんし、おそらくカズマが要人を連れているという事は向こうは既に察してくれていると思います。ですから、王宮への訪問と謁見の許可がすぐに下りたと思いますから」
「なるほど……。――でも、俺がS級ランク冒険者で、冒険者ギルドが身分を保証したからという可能性もあるよな?」
「それもあります」
「――まぁ、どちらにせよ一度は、エミリアを連れて行く必要があるもんな」
俺はアイテムボックスから、自作したドレスなどを取り出す。
「カズマ、それは?」
「エミリアのために、こんな時のためにと夜なべして作っていたモノだ」
「――え? そうなのですか? ――で、でも、洋服のサイズなんて……いつごろに……」
「エミリアと何度もしてただろ?」
「そうでした!」
頬に両手を当てると頬を赤くして微笑んでくる。
まぁ、正確に言うのなら俺のスキルである『クリエイターLV10』さんが、お仕事をしている訳で――、俺の視界にはエミリアのスリーサイズが表示されている。
でも、それを言うと、この世界がVRMMO『アルドガルド・オンライン』のゲーム世界内だと説明する必要も出てくるから、そういうのは面倒だから黙っておくとしよう。
アイテムボックスから取り出した装備と装飾品の数々。
「カズマ、それは一体――?」
「まずは、この服は純白のドレス(フリル付き)だな。俺のスキルで色々と付与していて、毒無効化と、魔法ダメージ軽減と物理ダメージ軽減を付与している」
「――え? これって、本当にもらっていいのですか?」
「当たり前だろ。エミリアの晴れ舞台の為に、俺が作っておいたんだから」
「それで、他にこれはなんでしょうか?」
エミリアが、手にとったのは赤銅色のネックレス。
「それは、オレイカルコスのネックレスのネックレスだな。身代わりの魔法が込められている。それと、そっちが反射のイヤリングだな。俺との遠距離通信が出来るネックレスだから、何かあったら、すぐに連絡をくれ」
俺は、腕時計を見せながらエミリアの質問に答える。
「このブレスレットは?」
「スターブレスレットだな。装飾品としても価値はある」
何せ、俺が『錬金術師LV10』のスキルで作った代物で、そこにスキル『付与術師LV10』を使い色々とバフをかけたものだ。
「高いというのは分かりますけど……。それに強い力も感じます」
「お――、そのブレスレットにはエミリアに魔力を付与する能力がある。主に、水・地・風・火の四属性の魔法を考えただけで中級魔法までなら使える。もちろんコストなしでな。ただし、回数には限度があるから、そこだけは注意が必要だな」
「もしかして、靴にも何か能力が付与されているのですか?」
「飛翔のヒールだな。100メートルの高さまでなら飛び降りても重力軽減で負荷が殆どなく着地できる」
「……あの、カズマ。これは全部、伝説級のアイテムでは……」
「以前の装備も含めて、秘密な」
「ありがとうございます!」
「じゃ、俺は外に出てるから着替えたら教えてくれ」
「分かりました」
「あと、これな」
「これはストールですか?」
「ああ。ドレス用に買っておいた」
エミリアに、ドレスと装飾品一式とストールを渡したあと、俺は一度、幌馬車から降りる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます