第29話 港町ケイン防衛戦(7)
「なるほど……」
フリーズアローは、ゲームをしている時には気がつかなかったが、基本的に物理系に属する攻撃なのか。
「うむ。どうじゃ?」
「次は、俺に向けて打ってくれませんか?」
見ているだけでは習得できなかったので、体で覚えることにする。
「馬鹿なのか? おまえさんは――」
「回復魔法が使えますので、手のひらとかにお願いします。ヤバそうなら避けますので」
「今ので危険だと分からなかったのか?」
「何事も経験なので」
とりあえず、スキルや魔法に関しては実体験を踏まえないと覚えられないというのが何となく理解出来てきたので、一時的に痛いかも知れないが、それを我慢しても補うほどの価値はあるはず。
何せ物理系ではあるモノの、大気から生成できるので、その有用性と凡庸性は非常に高い。
「はぁ。最近の若い冒険者の割には、見所があると思っておったが――、向こう見ずなだけだったとはな……」
「そういう心配はいいので」
俺は、足元に転がっている20キロくらいはあろうかという石を手刀で貫き――、爺さんに見せる。
「…………お主、一体――、どこの流派のものだ?」
「強いていうならタナカ流です」
「ふむ。聞いた事がない流派であるが……、その拳なら受け止めることは出来るじゃろうて」
爺さんが魔法詠唱を開始。
そして――、
「危なければ避けるんじゃぞ! フリーズアロー!」
俺は、高速で飛んでくる氷の矢を、手刀で粉々に砕く。
――スキル『肉体防御LV1▲』を習得しました。
――魔法『氷魔法LV1▲』を習得しました。
目論見どおり、魔法を習得できた。
肉体防御を習得したのは、計算外だが嬉しい誤算と言える。
「本当に、魔法を打ち落とす……とは……」
「爺さん」
「師匠と呼ばんか! とりあえず一通り魔法を見せる。そのあとは魔法に関しての講義じゃな」
次々を目の前で披露される魔法。
雷属性のサンダーボール。
水属性のウォーターボール。
風属性のウィンドカッター。
土属性のアースブリッド。
火属性のファイアーボール。
全ての魔法は初級魔法だが、中級とか上級魔法になると、さすがの俺もダメージを負いかねないし、この世界はゲームの皮を被った現実世界のような物なので、丁度いい。
全ての魔法を体で受けて習得していき――。
「アイスアロー!」
俺は師匠がアイスアローを放った大岩へと、習得したばかりのアイスアローを打ち込む。
「なんと……。魔法の詠唱も、魔法の成り立ちも教えておらんのに……」
「何となくできそうかなと……」
「なるほど……。儂も長いこと冒険者をしておるが、お主のような若者は初めてじゃよ」
「いえ。これも師匠の教えがいいからだと」
「ふむ。まぁ、よい。では、あとで金貨700枚を忘れずにのう」
「……一回教わるのに金貨100枚じゃないのか!?」
「ほっほっほっ。儂のパーティメンバーも言っておったろう? 一つの魔法につき金貨100枚じゃと」
「……そうだった」
俺は思わず溜息をついた。
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