第13話 港町ケイン(2)
俺もエミリアもかなり疲れていたようで、起きたのは翌日の昼間。
現在、俺とエミリアは公共の浴場へ来ていた。
理由は、宿で食事を提供される場所に入ったときに、他の宿泊客から白い目で見られたからだ。
「自分では、自分の匂いに気がつかないってのは本当だな」
歌う森――、アリアの港町、そして港町ケインに到着するまで一週間近く風呂に入っていなかったので、完全に自分の匂いに鼻が慣れてしまっていた。
そして、それはエミリアも同じ。
かなり高かったが石鹸を公共の浴場入口で購入。
1個、金貨1枚とアホほど高かった。
「はぁー」
石鹸で体を洗い、大浴場に浸かる。
内装は、日本の昔ながらの銭湯と言った感じで、スーパー銭湯のようなお洒落な場所ではない。
「おう、兄ちゃん」
「――ん?」
横を見ると、60歳以上の小柄な身長150センチもない老人が肩まで湯に浸かって、俺に話しかけてきた。
「何か?」
「さっき、公共浴場に入るときに獣人の女を連れていただろう?」
「ああ、そうだな」
「ありゃ、あんたの奴隷かい?」
「なんでだ?」
「――いや、奴隷の証である首輪を付けていなかったからさ」
「付け忘れただけだ」
そういえば、エミリアが言っていたな。
ガルドランドは、獣人を奴隷として扱っていると。
それなら、俺の奴隷ってことで話を合わせておいた方がいいだろう。
「そうかい。気を付けなよ。奴隷の首輪をつけてないと、攫われて奴隷契約されるからさ」
「分かっているさ」
奴隷契約? 何かの魔法か? アルドガルド・オンラインでは、奴隷契約なんてモノは無かったが……。
まぁ、職業でサモナーというのがあって、テイマー契約というのはあったが……、どうやら、そういうのとは別のようだからな。
あくまでもテイマー契約は、魔物と契約するものだったし。
「ならいいさ。そういえば、あんた新顔だが――、もしかしてアリアから来たのか?」
「まぁ、そんな感じだ」
俺は肩を竦めながら答える。
「なるほど。どうりで――」
「どうりで? 何かあるのか?」
「まぁ、教えておいてやるよ。いま、リーン王国は魔物に攻められていて大変な状況なのさ」
「そうなのか? そうは見えないが……」
「攻められているのはリーン王国の王城の方だからさ」
「つまり王城が落ちれば――」
「そういうことさ。ここもヤバくなる。だから、少しずつ隣国の商業王国ギランに疎開をしているのさ。人が少なかっただろう? 祭りの前だってのに」
「女将は、祭りがあるから他の宿泊はいっぱいだと言っていたが……」
「そうかい。本当なら、もっと早く――2週間前にはいっぱいになっているさ」
「なるほど……。ところで、アンタは逃げなくていいのか?」
「もう、この年だからね」
「そうか。情報感謝する」
「気にするな、若いの。がんばって生きるんじゃぞ」
俺は礼を言い風呂から上がる。
そして、公共の浴場の建物入口で待つこと体感時間的には30分が経過したところで、エミリアが建物から出てきた。
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