第235話 銀髪褐色の深窓の令嬢(1)
「――と、とりあえずだ。まずは、エミリアと相談させてもらいたい」
「ふむ……。仕方ない。それでは、一度、顔合わせをするというのはどうだ?」
「まぁ、顔合わせ程度なら……」
「よし! サーシャ! 入ってきなさい!」
手のひらをパンパンと叩く族長エウレカ。
すると、扉を開き室内に入ってくる一人のダークエルフが。
よく見れば、パーツは迫力美人と言ったエウレカに似てはいるが、キリッとした眼のエウレカとは対称的に、瞳は垂れ目で、エルフ特有の長い耳は垂れさがっている。
何と言うか、武人というか暗殺者らしいエウレカとは対称的に、サーシャというダークエルフの女性は、ダークエルフらしくないダークエルフと言った感じ。
深窓の令嬢と言えばいいのか?
それにしても……、胸がデカい。
これは、エミリアに匹敵――、いや! 凌駕するレベルか?
「カズマ殿。どうやら妹を気に入って頂けたようですな」
「……おふん。――ずいぶんと綺麗な方で、驚きました。この方なら、引く手数多なのでは? と、思いましたが……」
途中で、俺は言葉を濁す。
ダークエルフ族は、暗殺を生業とする種族というのはゲーム内の設定のままだ。
つまり、他所から嫌われているということ。
下手に、他種族と結婚するような事になれば、情報が漏洩するだけならまだ良いが、それを利用されて攻められるような事が起きればダークエルフという種族すら危うい立場になる。
それだけ、ダークエルフは各国の王族や貴族、上流階級ステータスを持つ者達からは、恐れられているのと同じように嫌われている。
「我々、部族のことを察して頂けたのですね」
「まぁ……」
ただし、アルドガルドオンラインの世界では、ダークエルフは存命しているし、特に俺との婚姻をする必要性は感じられないんだが……。
問題は、婚姻以外に相手が謝罪を受け入れる可能性が無いと言う点なんだよな。
「サーシャ。挨拶をしなさい」
「はい、お姉さま」
そう弱々しい口調で応じたサーシャは、俺の前に座ると何故か日本風に正座をすると頭を下げてくると――、
「サーシャ・ボールドと言います。ダークエルフ族の族長エウレカ・ボールドの妹です。まだまだ暗殺者としては未熟で、至らぬ点が多いですが、末永く宜しくお願いします」
――まるで結婚の挨拶のようなことをしてくる。
「どうだろうか? カズマ殿」
「ど、どうとは?」
「妹は器量も体も申し分ないと、姉から見ても思っている」
まぁ、たしかに……。
申し分ないどころかSランク級の美少女だ。
ただし、年齢はダークエルフだから、おそらく何百歳と言った感じになるだろうが。
「――と、とりあえず頭を上げてくれ」
何時までも頭を下げさせておく訳にはいかない。
「はい」
顔を上げてくるサーシャ。
その顔は、緊張しているのか強張っているのが良く分かる。
もちろん声からも――。
それでも、見目麗しさはまったく色褪せない。
「あの、カズマ様」
「な、なんだ?」
「私は、初めてですので……」
俺は心の中で「あー」と、思いつつ、エウレカの方を見るが、彼女はどや顔で親指を立てている。
何をしてやったり! みたいな顔をしているのか。
それよりも、そんなにストレートに初夜を望むような事を言われると男としては、据え膳食わぬは男の恥! と、ばかりに、少しは手を出したくなるが……。
だって、超絶美少女のエミリアと双璧を為すレベルの超絶美少女。
仕方ないと言えば仕方ないと言えるだろう。
そうだ! そうに違いない!
何とか自分を納得させつつも、ゲーム内の設定でサーシャというダークエルフが存在していたのかを思い出そうとするが、彼女がゲーム内で登場したのを俺は見た事がない。
つまり、重要キャラではないということか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます