第214話 エピローグ(1)

 金子隆の頭を壺の中に入れたあと、リオンの呪詛により蛆などが生まれる肉塊にし、生涯生き乍ら喰われるという無間地獄に陥れたあと、馬車の中へと入れておく。


「さて――、ほとんど片付いたようだな」


 馬車まで戻ってくる間に、リオンとイドルが無双し、魔王軍を殲滅。

 そして、その間は王都全域にエミリアが結界を張り魔王軍の侵入を防ぐという方法を取った。

 それが完璧なまでに上手くいったという所だろう。


「マスター」

「リオンか」


 王都から少し離れた木陰に隠していた馬車に駆け寄ってきたリオン。

 気が抜けた様子から魔王軍との戦闘は終わったと見ていいのかも知れない。


「魔王軍は、全滅したのか?」

「魔王軍の7割は殲滅済みです。残りは北へ転進し撤退しましたので」

「そうか。追いかけたりはしなかったのか?」

「マスターからの指示ではなかったので」

「そうか。となると……、あとは……王都の結界か」

「王都の結界に関しては奥方様が維持されておりますのじゃ。ただ一つ問題が……」

「問題?」


 コクリと頷くリオン。


「この国のトップがマスターと会いたいと」

「なるほど……」


 まぁ、俺も冒険者ギルドからの依頼で来ている訳だし、王都には立ち寄らないといけないからな。

 あとは王族に恩でも売っておけば、港町ケインで作った借金を返済できるかも知れない。


「やれやれ――、交渉の方が大変そうだな」


 リオンを供だって王都へ向かう。


「カズマ!」

「エミリア、とくに問題はなかったか?」

「はいっ! それよりも……」


 エミリアの視線が、王冠を頂いた女性へと向けられる。


「主」

「イドル、下がっていろ」

「はっ」


 俺の後ろに下がるイドルとリオン。

 それを見て何と思ったのかは知らないが、スカートを掴み頭を下げてくる女性。


「Sランク冒険者カズマ様とお見受けしてよいのでしょうか?」

「ああ、そうだが……」

「私は、リーン王国の女王シルフィエット・ド・リーンと申します。このたびは、国難を救って頂き、感謝したいのですが……。このような場では、些か不作法というもの」

「たしかにな……」


 王都の城壁の外と言っても、大勢の兵士達が見ている空の下で、国のトップたる女王と話すのは、些かどころか、かなりの問題だろう。


「――では、国を救った英雄として――、この世界の勇者として、歓待したいと思うのですが……」

「それはいいから。それよりも……やっぱり応じようかな?」


 思わず、『冒険者ギルドに報告してすぐに帰るから』と言おうとした所で、周囲の空気が宜しくない感じになりかけたので、俺は撤回する。


「そうですか」

「ただ勘違いしないで欲しい。俺は勇者じゃない。ただの冒険者だ」

「冒険者……」


 俺は、頷く。

 勇者という言葉にどれだけのマイナスイメージがあるのかは、少し考えれば分かることだ。

 とくに、俺を散々虐めてきた奴らと同列に扱われるのは気分が良い者ではない。


「分かりました。それでは、英雄カズマ様」

「英雄でもないから。普通にカズマと呼び捨てにしてくれていい」

「……分かりました、カズマ殿。それでは王城にてお休み頂ければ……」


 普通に城下町の宿に泊まるから問題ないと言いたいが……。

 周りの兵士の反応から見るに断るのは問題なんだろうな。


「分かった」


 そう俺は答えた。

 まぁ相手の無理も聞いておいた方が借金を払ってくれる可能性がありそうだからな!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る