第185話 エミリアの真相(4)

「生贄を、魔神様が降臨した場所に捧げるのは、古来からの習わし。それは竜の盟約の一つでございます」

「本当なのか? リオン」

「そのような古いしきたり、とうに廃れたと思っておりましたが」

「ふむ。嘘偽りはないのか?」

「このウェイドルザークの真名に誓って!」

「どう思う? リオン」

「マスター。我ら四竜が真名に誓うという行為は、己を作り出せし魔神様にも誓うということにもなりますので……」

「なるほど……」


 つまり、リオンの言い分では、嘘はついてはいないと言う事か。


「だが、そうなるとエミリアを生贄にした場合、獣人国ワーウルフの守護はどうなった?」

「契約は済んだ事。そして、守護期間が終わったということは、対価を得る事は当然でしょう」

「だが、ウェイザーよ。エミリア様は、この魔神様の奥方様であらせられるぞ?」

「――なっ!? ま、まさか……あの小娘が……」

「ん?」

「いえ。あの賢い娘が……」

「あ?」

「美しき者が、魔神様の奥方様だとは思わず……」

「ふむ。まぁいいだろう」


 一瞬、多重積層魔法を消し飛ばしてやろうと思ったが、リオンが止めてきたので何とか抑えたが――。


「こ、この殺気……。さすが魔神様」

「それは、どうでもいい。つまり獣人の国ワーウルフを貴様は守護するつもりは無いと言う事か?」

「と、とんでもございません!」


 土下座をしてくる美女の姿をした地竜ウェイザー。


「せいいっぱい! この命をかけて! 魔神様の奥方様の国を守らせて頂きます!」

「それならいいが、こんどエミリアに何か危害を加えようとしたら……どうなるか分かっているだろうな?」

「分かっております!」

「マスター。この地竜を従者にするつもりなのですか?」

「まぁ、エミリアの国をキチンと守護するのなら俺の配下に加えてやってもいい」

「ははーっ! この地竜ウェイドルザーク! 竜の契約の元、生涯! 獣人国ワーウルフを守護させて頂きます!」

「お前の働きに期待しているぞ?」

「もちろんです! そこのエンブリオンよりも――」

「何じゃと! マスターの一番の従者は妾じゃ! 奥方様の次に、子を儲ける予定なのじゃ!」

「つまり、我は主である魔神様の2番目の従者となると……」

「おい。どうして顔を赤らめる」

「魔神様のお世継ぎを作るのは四竜としては当然のこと!」

「種族自体違うんだが?」

「そのようなことは些細なことです。マスター」

「そうです。主よ」


 どう考えても竜と人間だと遺伝子配列が違うだろうに。

 何を言っているのか。

 そもそも俺にはエミリアがいるから、そういうことをするつもりはない。  


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