第305話 まったくうちの牢番はどうなってるんだよ!

 明日香を裸のまま縛り明けたところで肩に担ぎ、エミリアの元へと向かう。


「エミリア、大丈夫だったか?」

「はい。――でも、大丈夫では無いと思います」

「――ん? どういうことだ?」

「それは、一体、どういうことですか?」

「どういうとは……」

「その村娘のことです。いくら敵だったとしても裸の状態で縄で縛るとか……」

「ふむ……」


 布団をアイテムボックスから出す。

 

「じゃ、簀巻きでいいな」


 布団の中に明日香を入れてぐるぐる巻きにした上で縄で縛る。


「これで問題ないか?」

「はい! それより、この人ってカズマを攻撃してきましたけど、魔王軍関係者なのでしょうか?」

「さあ? ただ、あまりいい感じではなかったな」

「それで、この人、どうしますか?」

「そうだな……。とりあえず、拷問して情報を引き出すことは確定しているとして――」

「確定しているんですね」


 エミリアを侮辱したのだから、手加減は必要ないからな。

 そもそも先に刃を向けてきた相手だ。

 殺される覚悟くらいはあるはずだからな。




 それから城に戻ったころには、すでに日は完全に沈んでいた。

 女は魔法を唱えようとしたのでサイレンスで魔法を封じた上で、猿轡をし心身の自由を奪った上で城地下の牢獄へとぶち込んだ。

 今日は、疲れたから明日、拷問でもしてアルドガルド・オンラインの件を含めて聞き出すことにしよう。

 そんなことを思いエミリアと共同で使っている部屋へと戻ると――、


 ――コンコン


「はい」


 完全にお疲れモードだった俺の代わりにエミリアが声をあげてくれた。

 まぁ、エミリアはワーフランド王国の第一王女だし、俺が扉の中から答えるよりかは棘はないだろう。

 ――と、自分自身を納得させながら、ソファーの上に寝そべる。


「失礼致します、エミリア様。女王陛下様よりメッセージです」

「そう。ご苦労様。少し待っていて頂戴」


 侍女に渡された手紙をその場で読むことにしたのか?

 封書を明ける音と、ついでに折り畳まれた紙が開けられる音が聞こえてきた。

 それから数分。


「わかったわ。すぐに行くと伝えて頂戴」

「畏まりました」


 扉が閉まる音が聞こえてきた。


「どうかしたのか? エミリア」

「お母さまより、牢獄を使っている理由を聞きたいとのことよ?」

「あー、そういえば報告をしてなかったな」

「そうね。私も疲れていたから……。たぶん牢番から、お母様に伝わったと思うわ」

「それで俺たちに事情を聞きたいってことか」

「おそらくね。私達が投獄したのって獣人じゃなくて人だから……。その点も考慮に入れた上で迅速に行動をとりたいから呼び出してきたと思うのよね」

「それはありそうだな」


 ――なら、行くしかないか。


 仕方なく俺は重い体で立ち上がり、すぐに女王陛下の執務室へと赴く。

 執務室の前には、近衛騎士が二人、立っていて、俺たちの姿を確認すると、扉を開けてくれた。

 扉を抜けて執務室に足を踏み入れれば、執務机の前にエミリアの母親である女王陛下が座っていた。

 彼女は、扉が占められると、立ち上がる。


「急な呼び出しをしてしまって申し訳ないわね」

「――それで、お母様。ご用途は何でしょうか?」


 一切の形式もなくストレートで、自分の母親に呼びつけた原因を確認しようとするようにぶっきらぼうに言葉を叩きつけている。


「エミリア。貴女、少し私に対する当たりが強くないかしら?」

「当然のことだと思いますが? 私の旦那様を、最初に馬鹿にしたのはお母様の方ですが?」

「それは、仕方なかったのよ……」

「言い訳はそれだけですか? それよりも、牢獄に投獄した人間についてですが、あれは王墓の墓でカズマと戦った相手です。ですから情報を得るために明日から拷問をして、吐かせようと思っているようです。カズマが!」


 倒置法で、俺に話を振ってくるのは止めてほしいんだが?

 まぁ、エミリアの言っていることは間違っていないので俺は頷く。


「まだ関係が確定はしてないが、投獄した女は、まるで勇者たちのことを知っていたかのように話していた」

「――え? そ、それって……」


 女王陛下が、そこで動揺する。

 何故に、投獄された状態の女を聞いて、そんなに驚くのか。


「……カズマさんにエミリア。二人には、言っておかないといけないのだけれど、先ほど投獄された女は脱獄したそうよ」

「なん……だと……!? 縛っていたはずだよな?」

「それがね……。牢番が、簀巻きにされた女に話しかけられたらしいの。そして気が付いたら村娘を解放していたと」

「――で、脱獄して城から脱出したってことか?」

「そうなるわね」


 エミリアの母親の言葉に俺は溜息をつく。

 せっかくアルドガルド・オンラインのプレイヤーから有益な情報が得られると思ったのに……。

 まぁ、起きてしまったことは仕方ないか。 

 おそらく向こうも俺がアルドガルド・オンラインのプレイヤーだとは分かったはず。

 近い内に、必ず接触はあるだろう。

 その時に聞き出せばいい。


「だが、逃亡したのなら、どうして、侍女を使ってまで俺たちに話をするために、このような場を設ける必要があったんだ?」




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