六百二十二話 久々のおばちゃんの昼食
薬屋さんを後にした僕たちは、昼食までまだまだ時間があるので町をぷらぷらと歩くことにしました。
通りを歩いている人たちから声をかけられたりしていて、僕も手を振り返していた。
すると、見覚えのある名前が書いてある看板が目に止まった。
「えーっと、『黒髪の天使様も大絶賛のトマトパスタ』って、確かにこのお店で初めてトマトパスタを食べたんだよね……」
「ここ、レオ君がアマード子爵領に行って新しい二つ名を得たら、さっそく看板を直していたわ。そのうち、宮廷魔導師様もお勧めってやりそうだわ」
セレンお姉さん曰く、確かに看板に書いていることは間違っていないので、注意はしていないそうです。
他の町にも似たような看板はあったし、僕もいちいち注意はしません。
そんな今日も繁盛しているカフェの横を通り過ぎて、守備隊の施設に戻りました。
カンカン、カンカン!
ちょうど訓練場で新人を卒業した人たちによる訓練が行われていたので、昼食までの間僕たちは怪我人の治療をすることにしました。
何故かユキちゃんもマイ木剣を手にして訓練に参加していたけど、本当にユキちゃんは強くなったね。
身体能力強化を使っていたとはいえ、一般の守備隊員と互角に打ち合っています。
巡回について行って今はいないシロちゃんとピーちゃんはオークキングを簡単に倒す強さだけど、そのうちムギちゃんとソラちゃんも強くなるかもね。
そして、お待ちかねの昼食の時間です。
僕は、久々に女子寮に向かいました。
「レオ、いらっしゃい。いま昼食を作るから待ってな」
寮母のおばちゃんが、ニカッとしながら僕たちを迎えてくれました。
ちょうど他の女性隊員も来たみたいで、それぞれ席についていきます。
新人さんもいるけど、僕が保護された時にいた女性隊員もいますね。
「うーん、相変わらずレオ君は可愛いわね」
「性格も変わっていないし、昔のまんまね」
「絶対に出世すると思ったけど、宮廷魔導師で男爵様だもんね」
なんというか、皆さん僕の頭を笑顔で撫でています。
扱い方が、ちょっと親戚のおばちゃんっぽいですね。
一方で、初めて会った女性隊員は、僕のことをチラチラと見てきます。
普通に話しかけても、全然問題ないですよ。
ドン。
「あいよ、おまちどうさん」
そうこうしているうちに、おばちゃんの焼肉定食が完成しました。
おばちゃんの料理はとても美味しいし、量も多いんだよね。
流石に一人で食べきれないので、みんなで取り分けて食べます。
そして、ジェシカさんは配膳のお手伝いをしているので、その間に僕たちは食事を済ませます。
すると、新たに女子寮に入ってきた人がいました。
「ただいま戻りました」
なんと、アイリーンさんの妹のケイトさんが入ってきたのです。
そういえば、セルカーク直轄領に着いてから一回も会っていなかったよね。
「ケイトさん、こんにちはー」
「ああ、レオ君こんにちは。実は、ずっと近くの領地に出張していたのよ」
ケイトさんは何だか疲れた様子で椅子に座ったけど、ずーっと出張していたなら疲れるよね。
お腹も空いていたのか、あっという間に昼食の焼肉定食を食べちゃいました。
「せっかくレオ君が来ているのに、前から出張が決まっていたのよ。でも、こうしてレオ君に会えて良かったわ」
ケイトさんは水を飲みながら僕に話しかけたけど、タイミングが悪かったんですね。
そして、一息ついてから改めて僕にずずずと接近しながら話しかけました。
「そうそう、お姉ちゃんから手紙が来たけど、国境の軍の施設で凄いことをしたんだってね。機密事項は話さなくていいから、他に何をしたか聞いても良いかな?」
「あー、ケイトずるーい!」
「私も、レオ君とお喋りするの!」
あわわ、ケイトさんの話をきっかけに、他の女性隊員も僕の周りに集まってきました。
そして、午後の練習が始まるまで、僕は多くの女性隊員に囲まれながらお話をしていました。
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