第四百七十話 緊急会議

 王城に着くと、直ぐに大きい会議室に案内されました。

 既に陛下と閣僚も揃っていて、ナンシー侯爵とブラウニー伯爵が母親から聞いた事を報告していました。


「すみません、遅くなりました」

「おお、レオ君か。空いてる席に座るが良い」


 一礼してから、僕も席に座りました。

 ナンシー侯爵が陛下と閣僚に説明している内容は、僕が聞いた内容と同じです。

 すると、ナンシー侯爵の説明が終わったところで、陛下が僕に話しかけました。


「たまたまとはいえ、ナオが通りかかって治療したからこそ事件が発覚したのだ。もし治療を受けずに亡くなっていたら、真相は闇の中だった」

「助けられて良かったです。凄い痩せていたので、ご飯もあまり食べられなかったのではないかなと思っています」

「その辺りもふくめて、先発隊に確認に行かせた。どうせポール男爵にいきなり確認をしたところで、しらを切るのが見え見えだ」


 ポール男爵領は農業が盛んで、飢饉にならない限り飢えるはずはないとの事です。

 そして、先発隊からの調査結果は二時間ほどで来る予定なので、改めて集まる事になりました。

 他の人はお仕事があるからどうしようかなと思ったら、ギルバートさんの執務室で勉強をすることになりました。

 昼食も執務室に届けてもらえることになって、ギルバートさんと一緒に食べることになりました。


「以前から、ゴルゴン侯爵一派は何かをしでかしているのではないかと思われていた。レオ君も知っている通り、ゴルゴン男爵がアマード子爵領で大騒ぎもしている。ポール男爵が何かをしていても、何もおかしくはない」

「うーん、なんでそんなことをするのでしょうか。やっぱり、自分の欲が優先なんですかね?」

「欲、か。確かに、自分の欲を優先した結果だろう。陛下も自己の利益ばかりを追求するなと謁見で言及されたが、残念ながら奴らには届いていないだろう」


 昼食を食べながらギルバートさんが残念そうに話をしてくれたけど、僕も現実を目の前にしてかなり残念です。

 でも、僕ができるのは治療だし、多くの人を助けることはできません。

 うーん、何もできずにもどかしいですね。

 そして、二時間を待たずに再度会議参集がかかりました。


「重税などは資料を確認する必要がありますが、税率を超える税金を集めているのは間違いなさそうです。そして、今回の捜索容疑は屋敷の違法改修となります」


 ナンシー侯爵が陛下に報告をしているけど、屋敷の違法改修って何だろうか。

 その辺りも含めて、再度説明がありました。


「屋敷の改修には申請が必要ですが、宝物庫と称する建物が建てられていました。更に、建物を建設するにあたり住人を人夫に使っていたのですが、どうも賃金を払っていなかったそうです」

「もう、この時点でポール男爵を捕縛する材料が整ったな。宝物庫があるなんて、とても信じられないぞ」


 この時点で、陛下はかなり憤慨していました。

 しかし、これで報告は終わりませんでした。

 更にビックリすることが報告されました。


「住民の健康状態が良くないと報告されています。恐らく、市中に食料が回っていないものと考えられます」

「住民を食い物にして自分は贅沢をするなんて、言語道断も甚だしい。直ぐに部隊を編成して、ポール男爵を捕縛するように」

「はっ」


 こうして、軍が編成されることになり、一部部隊は直ぐに現地に向かうそうです。

 そして、陛下は更に指示を出しました。


「現地の状況を確認し、食料が不足している場合は炊き出しを行うとしよう。あと、教会から何も報告が上がっていないのも不思議だ。その辺りも確認するように」


 確かに、住人に何かあれば教会経由で情報が上がるはずです。

 ポール男爵領の教会で、何かが起きている可能性もありそうです。

 そして、陛下は僕に話をふりました。


「レオは、明日朝治療部隊と共にポール男爵領に向かってもらおう。数多くの人を治療するとなると、どうしてもレオの力が必要だ」

「僕も頑張って治療します」

「詳しいことは、商務大臣から伝えさせよう。しかし、結果如何では奴らを呼び出さないとならないな」


 陛下の言う奴らとは、間違いなくゴルゴン侯爵一派でしょう。

 贅沢をした結果がこういう事になり、僕も本当に残念です。

 でも、先ずは目の前で被害を受けた人を助ける事が優先なので、僕も頑張らないと。

 こうして会議は終わり、僕はフランソワーズ公爵家に戻りました。

 明日ポール男爵家に治療に行くのは間違いないので、それはモニカさんとターニャさんに話しても問題ないと言われました。


「直ぐに、明日の準備を行いましょう。場合によっては、数日間はポール男爵領に行く可能性があるわ」

「そうね、その可能性は否めないわ。旦那様の報告如何だけど、料理ができる侍従も同行させた方がいいわね」


 話を聞いたモニカさんとターニャさんは、直ぐに想定される物を準備し始めました。

 シロちゃんとユキちゃんもやる気満々で、ジェシカさんも僕に付いていくそうです。

 そして、夕食時にギルバートさんが屋敷に帰ってきて、治療だけでなく炊き出しも行うことが決定しました。

 因みにポール男爵はあっさりと捕まって、ポール男爵一家と執事を始めとする使用人も捕まって王都へ護送されたそうです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る