第三百一話 雨天の中の旅

 シークレア子爵領への旅は六日目に突入しました。

 何もなければ、今日含めて二日で到着します。

 きっと明日には、待望の海が見れるんだね。

 今日も元気に起きて、張り切って行きましょう!


 ザーザー。


「うわー、シロちゃん外は大雨だよ……」


 気合を入れたのに、外は大雨です。

 窓の外を見て、僕とシロちゃんは思わずしょんぼりしちゃいました。

 うーん、馬車便出るかな?

 それくらいの大雨ですね。

 先ずは、宿のおばちゃんに聞いてみよう。


「馬車便かい? シークレア子爵領へは道のりも平坦だし、このくらいなら馬車便は出るよ」


 えー!

 凄い雨に見えるけど、馬車便は出るんだね。

 じゃあ、準備はしっかりしないとって事で、僕は外套を着込みました。

 シロちゃんは、僕の服の中に避難します。


 ザーザー。


 雨の中を歩いていると、馬車乗り場では本当に馬車便の準備をしていたよ。

 僕とシロちゃんは、とってもビックリしちゃったね。

 でも馬車便が出るなら乗らないと。

 僕はお金を払って、馬車に乗り込みました。


 ザーザー。

 パカパカパカ。


 まだまだ雨は降り続いているけど、馬車便にはそこそこ人が乗っていたよ。

 流石に雨が強いので、今日は無言の人が多いね。

 馬車便も、安全のためにゆっくりと進んで行きます。

 動物や魔物も雨を避けているのか、道中は何も出てきません。

 馬車の進む音と雨の音だけが聞こえてくるね。


 ポツン、ポツン、ポツン。


 でも、雨もお昼過ぎには段々と弱くなっていって、今夜泊まる村に着く頃にはすっかり上がりました。


「わあ、とっても大きな虹だ! 凄く綺麗だなあ!」


 綺麗な夕日と共に、とっても大きくて綺麗な虹が空に架かっていました。

 素敵な光景に、僕もシロちゃんも大興奮です。

 虹って、雨の後に見れるんだね。

 今日は雨が凄かったけど、最後に良いのが見れたね。


「よっ、と。今日はどこの宿にしようかな?」


 僕とシロちゃんは、馬車から降りると直ぐに宿を探し始めました。

 もたもたすると、直ぐに暗くなっちゃうね。


 ガヤガヤガヤ。


「あっ、あの宿が雰囲気良さそうだね」


 多くの人で賑わっている食堂が、丁度宿併設みたいです。

 僕だけじゃなくてシロちゃんの勘にもピピピってきたみたいだし、問題ないですね。

 まずは、宿の予約をしちゃいましょう。

 僕とシロちゃんは、お店の中に入りました。


「すみません、一晩お願いします」

「おお、ちっこい客だな。ちょいと待ってろ」


 カウンターには、おひげもじゃもじゃのおじさんがいたよ。

 お金を払って、部屋の鍵を受け取ります。

 二階に上がって部屋を確認すると、昨日に引き続きベッドと机だけのシンプルな部屋だったね。

 でも、とても清潔にしてあるし、全然問題なしです。

 ではでは、食堂にいって夕食を食べちゃいましょう。


「おじさん、今晩のお勧めは?」

「今朝海で獲った魚を使ったスープだ。野菜も入っていて美味しいぞ」


 おお!

 遂にシークレア子爵領の海のお魚が出てくるんだ。

 もちろん、お魚たっぷりのスープを頼みます。


「ほら、持ってきたぞ。熱いから気をつけろよ」

「ありがとー!」


 おじさんが、とっても良い匂いがするスープを運んでくれたよ。

 切り身にしたお魚が入っていて、お野菜も沢山入っているよ。

 ではでは、早速食べちゃおう。


「もぐもぐ。わあ、コバルトブルーレイクでとれた魚と違うけど、海のお魚もとっても美味しい!」

「海の魚はとても美味いぞ。しっかりと味わえよ」


 昨日に引き続き、今日も大当たりの夕食だ。

 お魚だけじゃなくて、お野菜も美味しいです。

 シロちゃんも、お魚を堪能していました。

 シークレア子爵領に着く前に、海の味を食べちゃったね。

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