第三百話 とっても美味しい料理に出会ったよ
シークレア子爵領への旅も五日目です。
何もなければ、残り三日でシークレア子爵領に着くね。
「昨日は、遅くまで男爵様とお喋りしちゃったね」
僕は、一緒に起きてきたシロちゃんに話しかけました。
僕の噂話を聞きたくて、夕食が終わっても男爵様は大興奮でした。
いつもより、少し遅くまで起きていました。
喋り疲れて、直ぐに寝ちゃったけどね。
僕はベッドから起きると、使った客室を片付け始めました。
「一晩泊めてくれてありがとうございます」
「レオ君、また会えた時には新たな逸話を聞かせてくれ」
僕は男爵様の屋敷の玄関で、男爵様と握手をしました。
きっと男爵様は良い人だから、これから街はよくなりそうだね。
さてさて、僕とシロちゃんは馬車乗り場に向かわないと。
パカパカパカ。
「御者さん、この先はどんな所ですか?」
「小さな男爵領だ。だが、農業が盛んでそこそこ発展しているぞ」
おお、農業が盛んならきっとお野菜がとっても美味しいんだ。
御者の人からとっても良い話を聞いて、僕もシロちゃんもテンションが上がっちゃったよ。
ふふふ、どんな料理が出てくるか、とっても楽しみだね。
「「「ガルルル!」」」
「とー!」
だから、道中オオカミが現れても僕はあっという間に倒しちゃうんだからね。
今日の僕とシロちゃんは、いつもよりも一味違うよ。
「すげー、これが黒髪の魔術師の魔法か」
「あっという間にオオカミを倒したぞ」
乗客の人が僕とシロちゃんを見て思わずビックリしているけど、今日の僕とシロちゃんはやる気満々です。
こうして、今夜泊まる男爵領に無事に到着しました。
まずは、冒険者ギルドに行って倒したオオカミを納品しないとね。
どさっ。
「すみません、倒したオオカミを持ってきました!」
「おお、こりゃ沢山倒したな。血抜きもバッチリだ」
卸担当の職員に冒険者カードを渡して、倒したオオカミを引き取って貰います。
ふふふ、おじさんもシロちゃんの血抜きに太鼓判を押してくれたよ。
後はお金を貰うだけなんだけど、ここでちょっとしたトラブルが起きちゃった。
「おい、このガキが! 俺等の倒したオオカミを奪いやがって」
「ガキのくせして、意地汚い事をしやがって」
「この落とし前、どうやってつけてくれようか!」
とってもガラの悪い三人の冒険者が、僕の納品したオオカミを自分達から奪ったと言ってきたよ。
こうやって、僕とシロちゃんがオオカミを冒険者ギルドに卸したお金を奪い取ろうとしているんだね。
こんな馬鹿なことをすれば、直ぐに捕まると思うけどなあ。
僕も荒事にすっかり慣れちゃったね。
「おいお前ら、どこの誰に喧嘩を売っているんだ。この小さな男の子は、黒髪の魔術師のレオだぞ。昨日も、隣の男爵領でゴブリンキングを倒したばかりだ」
「「「く、黒髪の魔術師?」」」
卸担当の職員が、手に持っていた僕の冒険者カードを三人組にどーんと見せました。
ガラの悪い三人の冒険者は、僕と卸担当の職員を交互に見ています。
あっ、三人の冒険者の顔色が段々と悪くなってきましたね。
ガシッ。
「おら、お前ら。一体誰に喧嘩売っているんだ! こんな小さな男の子に喧嘩を売るなんて、黒髪の魔術師でなくてもあたしは怒るぞ!」
「「「げー! ギルドマスター!」」」
そして、熊のように大きなおばさんが現れて、三人組を抱えて引きずっていきました。
物凄い迫力だったけど、あのおばさんがこの男爵領のギルドマスターなんだね。
あっという間に、嵐が去っていったよ。
「ほら、お金だ。ギルドマスターには子どもがいるから、今みたいに子どもに理不尽な暴力を働く奴が大嫌いなんだ」
卸担当の職員が色々と教えてくれたけど、総じて言えるのは悪い事はしちゃ駄目って事ですね。
さあ、僕とシロちゃんは頭を切り替えて美味しい料理を目指そう。
ふふふ、卸担当の職員から宿付きの食堂を教えて貰っちゃったよ。
冒険者ギルドを出て、直ぐの所なんだって。
「わあ、良い匂いがしてきたよ!」
お店の前からとっても良い匂いがしてきて、僕とシロちゃんはテンションが上がっちゃったよ。
早速、お店に入ります。
「あら、小さいお客様ね」
「こんばんは、宿をお願いします。あと、食事もお願いします」
「小さいのに冒険者なのね。じゃあ、二階の部屋を用意するわ」
カウンターにいたおばちゃんに話しかけて、部屋の鍵を預かりました。
部屋はとってもシンプルで、ベッドと机が置いてあるだけです。
ではでは、食堂に向かいましょう。
「おばちゃん、お勧めは何ですか?」
「新鮮な春キャベツを使ったロールキャベツだよ。キャベツも甘くて美味しいよ」
おお、話を聞いただけでとっても美味しそうだね。
しかも、ちょうど旬のお野菜だ。
もちろんロールキャベツを頼みました。
「はい、どうぞ。沢山食べてね」
直ぐに、ロールキャベツとパンが出てきました。
トマトベースのスープにロールキャベツが入っていて、とっても美味しそうだね。
ではでは、早速一口。
「うーん、トマトの味も濃くてロールキャベツも甘くてとっても美味しいよ!」
「そうかい、ありがとうね」
ニコニコして食べる僕とシロちゃんの事を、おばちゃんが撫でてくれました。
久々に、大当たりの料理だね。
僕とシロちゃんは、お腹いっぱいロールキャベツを食べちゃいました。
「おばちゃん、とっても美味しかったです!」
「黒髪の天使様にうちの料理を褒められて、こっちも嬉しいよ」
あっ、おばちゃんは僕のことを分かっていたんだね。
でも、ロールキャベツがとっても美味しかったのは紛れもない事実だもんね。
僕とシロちゃんは、とってもほっこりして今夜泊まる部屋に戻って行きました。
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