第三百二話 ちょっと変な盗賊との遭遇
シークレア子爵領への旅も、七日目に入りました。
なにも無ければ、今日シークレア子爵領の領都に到着します。
「シロちゃん、いよいよ到着するね!」
僕もシロちゃんも、新しい街に到着するワクワクでいっぱいです。
さてさて、まずは着替えて宿の部屋を綺麗にして朝食を食べないと。
僕とシロちゃんは、気合を入れてベッドから降りました。
パカパカパカ。
「うーん、今日はとってもいい天気だね」
昨日は大雨だったけど、今日は風も穏やかで温かくていい天気です。
領都に向かうだけあって、馬車に乗っている人もとても多いです。
「おじさん、どのくらいで領都に着きますか?」
「早ければ、昼前には着くぞ。この街道は動物も少ないし、比較的安全だ」
御者のおじさんにどのくらいで着くか聞いたけど、この分だとあっという間に領都についちゃうね。
僕とシロちゃんは、更にワクワクしてきました。
「おやまあ、黒髪の天使様もとてもめんこいのう」
「そうじゃのう。とっても愛らしいですなあ」
「ははは、黒髪の魔術師もまだまだ小さい子どもって事だな」
僕とシロちゃんがはしゃいでいるのを見て、馬車に乗っている人は思わず笑っていました。
でも馬車に乗っている人が何か言っても、僕とシロちゃんは前方に夢中で全然気にしないよ。
ガサガサ、ガサガサ。
「あっ、前方に何か複数の反応があります。えーっと、人っぽいかも?」
もう少しで領都に到着って所で、茂みが不自然に揺れていた。
うーん、何かやりますって丸わかりだよ。
「よっしゃあ、昼食前の腹ごなしとするか」
「小さい子どもに良い所を取られない様にしないとな」
ここで、屈強な肉体を誇る背の高い冒険者四人組が何やら準備を始めました。
どうやら、僕とシロちゃんが戦闘しなくてもいいようにするみたいです。
この人達は、とっても強い雰囲気が出ているよ。
ガサガサ、ガサガサ、ガサッ。
「おっ、ビンゴだな。黒髪のチビが馬車に乗っているぞ」
「俺らはついているな。おら、黒髪のチビ、殺されたくなければ有り金を全部置いていけ!」
「チビのくせに、相当稼いでいるらしいな。俺らは貧乏な生活しているのに!」
ガサガサしていた茂みの中から、八人組の小汚い男が出てきた。
どこからどう見ても、盗賊で間違いないね。
どうも僕がシークレア子爵領に行くって知っていたみたいで、馬車を待ち伏せしていたっぽい。
でも、粋がっている割にはナイフしか手にしていないし、とっても弱そうだよ。
もしかしたら、僕とシロちゃんにナイフを見せたら怯むって思ったのかな?
「はあ、この程度じゃ運動にもならないな」
「そうだな、ナイフを持って気が強くなっただけのガキだな」
馬車が止まると、溜息をつきながら屈強な体の冒険者四人組が馬車から降りていきました。
手には何も武器を持っていないけど、ぽきぽきと鳴らしているその拳も十分武器になるね。
「おおおおお、お前らじゃない。ひっこめ!」
「お、俺達は、そのガキに用があるんだ」
目の前に現れた屈強な冒険者に、盗賊は完全にビビっています。
うーん、僕とシロちゃんの事を脅していた威勢の良さは、一体どこに行っちゃったのだろうか。
「ナイフを持って脅した時点で、立派な犯罪が成立するぞ」
「なに、生け捕りにするから安心しろ。ちょっと痛い目にあうがな」
「「「ひっ、ひぃ……」」」
ぽきぽきと拳を鳴らしながら冒険者が盗賊に近づくと、盗賊は顔を真っ青にしながら情けない悲鳴をあげた。
うん、もう勝負ありですね。
「「「「おらー、覚悟しろ!」」」」
「「「うわー!」」」
バキッ、ドカッ。
そして、あっという間に決着がつきました。
もちろん、冒険者の圧勝です。
一瞬にして盗賊はノックアウトし、縄で拘束されました。
僕とシロちゃんも、馬車を降りて冒険者のところに向かいます。
「わあ、皆さん凄く強いですね!」
「まあ、このくらいなら余裕だ」
「というか、コイツラが弱すぎるってのもあるな」
僕もシロちゃんも凄いと冒険者を褒めると、冒険者はちょっと照れながら僕の頭を撫でていました。
このムキムキマッチョの筋肉は、伊達ではなかったね。
「じゃあ、この盗賊を乗せる護送用馬車を作っちゃいますね」
ズゴゴゴ、ガシン!
「ふう、これで馬車に繋げればオッケーですよ。剣で切っても壊れません」
「うお、一瞬で土の馬車を作ったぞ」
「しかも、めちゃくちゃ硬い。一体どうなっているんだ?」
「この土の馬車を見ると、黒髪の魔術師の噂話はまだまだ序の口だったんだ……」
僕は頑丈な馬車の出来にニッコリしていたけど、冒険者だけでなく他の乗客も土の馬車を見てあ然としていました。
でも、このくらいなら全然余裕だよ。
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