第四百十話 クリスちゃんとの再会

 コンコン。


「失礼します。フランソワーズ公爵家の方々の馬車が、領内に入られたそうです」

「おっ、来たか。じゃあ、全員で玄関に並ぼう」


 応接室にいてお茶を飲んだり順番にユキちゃんをもふもふしていたら、遂にフランソワーズ公爵家の馬車がやってきたと侍従の人が教えてくれた。

 僕達は身だしなみをささっと整えてから、玄関に向かいました。

 ユキちゃんも、頭にシロちゃんを乗せて一緒についてきます。

 ネストさん夫妻、ダンビルさん夫妻の隣に、僕とシロちゃんとユキちゃんが並びます。

 すると、以前も見た事があるフランソワーズ公爵家の馬車がバーボルド伯爵家の敷地内に入ってきました。

 そして馬車は、僕たちの前に停まりました。


 ガチャ。


 馬車の扉が開くと、まず少しぽっちゃりとした中年男性が降りてきました。

 そして、その後に二人の女性が降りてきました。

 そのうちの少女が、僕に向かって走ってきました。

 とっても綺麗な桃色の髪の毛は、僕も忘れる事はありません。


「おにーさまー!」

「わっと、クリスちゃん?」

「うん、そうだよ! おにいさま、会いたかった!」


 最後にあった時と比べてすっかり大きくなったクリスちゃんが、僕に笑顔で抱きついてきました。

 突然の再会にちょっと驚きつつ、僕も笑顔でクリスちゃんを抱きしめました。

 シロちゃんも、僕の肩に飛び乗ってクリスチャンにひしって抱きついています。

 でも、ユキちゃんは何が何だか分からないですね。


「うむ、クリスも良い笑顔だのう」

「ええ、そうですわね」


 恰幅の良い男性とクリスちゃんの母親のターニャさん、それにバーボルド伯爵家の面々が、抱き合っている僕たちを微笑ましく見ていました。

 玄関にいるのも何なので、全員応接室に移動します。

 僕はクリスちゃんと手を繋ぎながら応接室に向かうけど、クリスちゃんは僕の反対の手を握っているユキちゃんが気になったみたいです。


「おにいさま、このワンちゃんは?」

「ユキちゃんっていって、僕の新しいお友達なんだよ」

「そうなんだ。ユキちゃん、宜しくね」

「アオン!」


 ユキちゃんも、クリスちゃんに向かって元気よく手を上げていました。

 一人と一匹がさっそく仲良くなってくれて、僕もシロちゃんも一安心です。

 そして応接室についても、クリスちゃんは僕の隣に座ってユキちゃんを膝の上に乗せてもふもふしていました。

 その間に、僕は初めて会う恰幅の良い男性と挨拶をします。


「初めまして、僕はレオです。スライムのシロちゃんと、コボルトのユキちゃんです」

「ほほほ、クリスがここまで良い笑顔になるとはな。レオ君、クリスの父親のギルバートだ。娘の命を救ってくれて、本当に感謝する」


 ギルバートさんは青色の髪をオールバックにしていて、僕にもにこやかに握手をしてくれました。

 とっても優しそうな、良い人って感じですね。

 すると、ネストさんが凄い事を教えてくれました。


「レオ君、クリスさんのお父さんは国の商業を担当する商業大臣なんだよ」

「えっ! それって、もしかしてチャーリーさんやブランドルさんと同じ大臣なんですか?」

「そうだよ。先月、レオ君がバーボルド伯爵領に来る前に大臣に就任したんだよ」


 おお、ギルバートさんって家柄だけじゃなくてお仕事もとっても凄いんだ。

 僕もシロちゃんも、とってもビックリしちゃったよ。

 すると、ユキちゃんとお喋りしていたクリスちゃんが、僕の服の袖をちょいちょいと引っ張りました。


「今度ね、お父様のお祝いをするんだよ! 沢山の人が来るんだよ」

「商務大臣就任祝いってなると、とっても偉い人が沢山来そうだね」

「そうだよ! おにいさまも、一緒に参加しようね」


 クリスちゃんの満面の笑みを見て、僕は思わず固まってしまった。

 そのパーティーって、とんでもなく凄い事になりそうなんだけど。

 すると、ギルバートさんとターニャさんがにこやかに話し始めました。


「レオ君ほどの人物なら、パーティーに参加しても何も問題ない。というか、私が普通にレオ君を招待したいよ」

「ええ、そうですわね。全国を旅して多くの奇跡を起こしている黒髪の天使様が参加するとなると、パーティーも一層盛り上がりますわ」

「クリス、とっても楽しみなの!」


 みんな招待したいって言ってるけど、これは既に僕がパーティーに参加するのが決定みたいですね。

 そして、ビックリする話が更にギルバートさんから続きました。


「そうそう明日はレオ君は冒険者ギルドに到着の手続きをすると思うけど、午後に嫁と娘と一緒に王城に行く事になった。王妃様が、是非とも黒髪の天使様をお茶会にお誘いしたいそうだよ」

「おにいさまと一緒のお茶会、クリスとっても楽しみ!」

「ええー!」


 お、王妃様って王様の奥様だよね?

 王都に着いて、いきなりそんな凄い人とお茶をする事になるなんて……

 クリスちゃんはとってもニコニコしていたけど、僕は逆に気が重くなっちゃいました。

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