第四百九話 王都に向かう日の朝

 そして、いよいよ王都に行く日の朝になりました。

 僕達はいつも通りに起きて、朝の訓練を行います。


 カンカンカン!


「アン、アン、アン!」

「ユキちゃん、とっても上手だよ」

「アン!」


 今日は朝からシロちゃんとユキちゃんの手合わせが行われていたけど、ユキちゃんも保護された時に比べてずっと強くなったね。

 元気よくシロちゃんに木剣を打ち込んでいるけど、体も大きくなりました。

 いっぱい食べて、いっぱい動いて、いっぱい寝るを繰り返していたし、僕も昔はお昼寝をしていたもんね。

 魔法剣はまだ発動できないけど、魔法の腕も上がりました。

 もっと頑張れば、もっと強いコボルトになれるね。


「じゃあレオ君、遠慮なく打ち込んできてくれ」

「はい!」


 僕はというと、ダンビルさんに向かって木剣を構えていました。

 ダンビルさんが僕の実力を知ってみたいって事で、最後に手合わせする事になりました。

 ダンビルさんも木剣を構えていて、庭のはじではシャンティさんも様子を見に来ていました。

 因みに、僕は身体強化魔法無しで戦います。


 シュッ、カンカン!


「えい、とう!」

「良い感じだよ。どんどんと打ち込んでね」


 ダンビルさんは僕の予想通りとても強くて、一生懸命に打ち込む木剣を軽々と受け止めています。

 間違いなく、ダンビルさんは軍の普通の兵よりも剣の腕があります。

 そして、五分くらい打ち合ったところで、お互い距離をとりました。


「いやあ、レオ君はとっても強いよ。まだ小さい子どもなのに、身体能力強化抜きでここまで剣を打ち込めるなんて。もっと体が大きくなったら、魔法だけでなくて剣でも大成しそうだよ」


 お互いにタオルで汗を拭きながら、ダンビルさんが僕との手合わせの感想を言っていました。

 身体能力強化を使わない状態でもキチンと剣を振るえるようにならないと、身体能力強化を使った時にもちゃんと剣を振るえないよね。

 これからも、バッツさんからの教えを守りながら頑張って訓練しないとね。

 訓練が終わったので、僕たちは朝食を食べる為に食堂に向かいました。


「レオ君、朝食を食べたらお風呂に入ってきなさい。せっかくフランソワーズ公爵家の者が来るのに、汗をかいた状態じゃ失礼にあたる」

「あっ、確かにそうですよね。それに、今日はキチンとした服を着るんですよね」

「じゃあ、私も一緒に風呂に入ろう。私も訓練で汗をかいているからね」


 朝食を食べていると、ネストさんが僕に話しかけてきました。

 ダンビルさんも僕と手合わせしたし、ついでにユキちゃんもピカピカにしちゃおう。

 僕はちゃちゃちゃと朝食を食べ終えて、みんなでお風呂に向かいました。


 ゴシゴシゴシ。


「ユキちゃん、泡まみれになっちゃったね」

「アオン」


 僕が体を洗っている横で、シロちゃんがユキちゃんの体を触手で洗っていました。

 何だかユキちゃんの体が泡でもこもこで、羊さんみたいになっていますね。

 綺麗になったところで泡を流して、軽く湯船に浸かります。

 今日は汗を流すのが目的なので、そこまでゆっくりと湯船には浸かりません。


「ふわあー」

「ワフー」

「ふふふ、気持ちよさそうな表情をしているね」


 それでも僕たちはお風呂が大好きなので、湯船に入るととっても気持ちよくなります。

 シロちゃんもユキちゃんも、大きなたらいの中で気持ちよさそうにしていますね。

 こうして汗も流したので、今度はお風呂から出てキチンとした服に着替えます。


「はい、髪の毛もキッチリと仕上げますよ」


 侍従の人に髪の毛もセットしてもらい、準備万端です。

 僕は、バーボルド伯爵家の人々と一緒に応接室に移動しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る