第四百七十三話 金ぴかだらけの屋敷
教会から歩くこと約十分、僕たちは目的地のポール男爵の屋敷に到着しました。
屋敷は軍が周囲を厳重警戒しているけど、一目見てその理由が分かりました。
「凄い彫刻の数です。しかも、これは光っています!」
「恐らく銅製の彫刻だ。これだけの彫刻があるなんて、贅沢の極みだぞ」
屋敷の庭には、色々な物が並べられていました。
緑はとても少なく、何だか無機質な感じもしました。
でも、それはあくまでも序章でした。
次の衝撃は、屋敷の中に入った時でした。
「うわあ、これは……」
「大きい壺に大きい自画像に、無駄な装飾がされた鎧。悪趣味も良いところだな」
僕は玄関ホールを見て絶句し、トータス副団長さんは思わず苦笑していました。
何だろうか、確かに高級品であるのは間違い無いんだけど、ごちゃごちゃしていて目がチカチカするよ。
でも、これだけの高級品が屋敷内にあれば、警備が厳重でも仕方ないですね。
そして、応接室に案内されるとブラウニー伯爵が僕たちを出迎えてくれました。
「忙しいところ、ご苦労だ。副団長、教会の方はどうだ?」
「押収を進めて、王都の大教会へ送り終わったところだ。住民への炊き出しと治療を進めているが、そっちが大変だ」
「俺も住民を見たが、あまりよくないと感じた。当の本人はぶくぶくに太ってやがったぞ」
ブラウニー伯爵は少し首を振りながら冷静に話をしていたけど、僕にはポール男爵に怒っているようにも感じました。
そしてブラウニー伯爵は、とってもびっくりすることを教えてくれました。
「屋敷の中を見てびっくりしただろう。これでも、半分運んだんだよ。まあ、まだ本命は手付かずだがな」
「えー! 僕は、まだ何も運んでいないと思っていました」
「レオの気持ちはよく分かる。俺だって、屋敷の中に踏み込んだ時は『なんだこりゃ!』って叫んだぞ」
フランソワーズ公爵家だって普段は贅沢をしていないし、調度品も良いものを適切に配置しています。
僕としては、最初の状態のポール男爵家を見なくて良かったのかもしれません。
そして、ブラウニー伯爵が本命の場所に連れて行くと言って、僕たちを再び庭に案内しました。
庭には、一見すると普通の小屋みたいな建物が建っていました。
でも、中に入ると三回目の衝撃を受けました。
「な、な、な。宝石とかが、山程あります……」
「全部高級品だな。これは凄い、陛下も持っていないものだぞ」
なんと、小屋の中には金品がこれでもかと並べられていました。
陽の光がはいると、光って眩しいくらいです。
言葉も出ないとは、この事を言うんですね。
「これは、奴のコレクションだ。屋敷に来た仲間をこの小屋に呼んで、自慢していたらしいぞ」
「一見するとただの小屋だけど、中身を見れば違法建築だと直ぐに理解できるぞ。しかも、使用目的がどうしようもないな」
僕はもう言葉が出なくて、トータス副団長さんも呆れるばかりです。
この小屋にある物も、この後直ぐに押収されて王都に運ばれるそうです。
そんな中、ブラウニー伯爵が頬をポリポリとしながら僕にとある事を頼んできました。
「レオ、屋敷の使用人が虐待を受けていて怪我をしている。玄関ホールに集めるから、治療してやってくれ」
「えー、そんなことまでしていたんですか? 直ぐに治療しますけど、僕はプンプンです」
「主人による使用人の虐待は禁止されているが、奴は守る気はなかったみたいだ」
ポール男爵がした事が酷すぎて、僕もちょっと怒っています。
心を落ち着かせる為にも、ここは治療に専念しましょう。
僕たちは屋敷に戻り、魔法袋からイスや簡易ベッドを取り出しました。
そして、ブラウニー伯爵の部下が怪我をした使用人を連れてきたけど、三十人くらいいるのはきっと気の所為ではないですね。
僕は、気合を入れて治療を始めました。
「すみません、順番に治療をしますので」
「いえ。黒髪の天使様に治療頂けるなんて、私たちは幸運です」
「もう怪我が治らないのかと、そう思っていました」
僕が使用人を治療し始めると、一様に元気を取り戻していきました。
でも、町の人ほどじゃないけど、使用人も痩せていますね。
僕はやるせなさを感じながら、治療を続けました。
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