第二百七十一話 僕達の歓迎会です

 夕方前には、大部屋の治療は全て完了しました。


「まさか大部屋に入院していた者の治療が、午後だけで全て終わるとは……。退院の手続きが済んだら、入院待ちの者の手続きを行なう様に」

「はっ」


 僕としては普通に治療したつもりなんだけど、マンデラ様としては大分早く終わっちゃったみたいですね。

 兵に指示を出して、次の入院患者の手続きを始めていました。


「明日は、個室に入院している人ですね。頑張って治療しますね!」

「ははは、やる気満々だな。無理をしない程度に頑張ってな」


 まだまだ魔力はあったけど、今日は無理しないという事でここまでです。

 帰り支度をして、皆で馬車に乗り込みます。


「あっ、そういえば僕達はどこに泊まるんですか?」

「勿論、私の屋敷だ。治療をして貰う間は、三人とも屋敷に泊まって貰うぞ」

「「「えっ!」」」


 昨日と同じく宿に泊まるのかなと思っていたから、僕もフレアさんもミシャさんもビックリしちゃいました。


「わ、私、貴族の方の屋敷に泊まるの初めてです……」

「も、勿論私もよ。どどどど、どうしよう……」


 あれ?

 フレアさんとミシャさんが、急に慌て始めたよ。

 何かあったのかな?


「フレアさん、ミシャさん、貴族の人の屋敷に泊まった事ないんですか?」

「ないよ、一回もないよ。泊まれるはずないよ」

「私もですよ。普通、どんなに凄い冒険者だとしても、簡単に貴族の方の屋敷に泊まる事は出来ないわよ」


 えっ、そうなの?

 僕、何回も貴族の人の屋敷に泊まっていたよ。

 うーん、何でだろうか?


「それは、レオ君が特別に凄い冒険者だからだよ」

「逆に、貴族の方がレオ君を泊めたいと思っているんだよ」


 そういえば、僕から泊めて下さいって言ったことはないもんね。

 そんな事を思っていたら、マンデラ様のお屋敷に到着しました。


「侍従に部屋まで案内させよう。夕食の準備ができたら、また呼ぼう」

「それでは、ご案内します」


 僕達は、侍従の人の後をついていって部屋に到着しました。


 ガチャ。


「こちらになります。夕食までごゆるりとお休み下さいませ」

「わあ、とっても大きなお部屋ですね」

「こりゃまた、凄い部屋だね」

「昨日の宿と同じくらい豪華だわ」


 案内されたのは、とっても大きな客室です。

 ベッドも大きいし、お風呂も付いています。

 夕食まで少し時間があるので、先にお風呂に入る事にしました。


「はふー、気持ちいですー」

「レオ君は本当にお風呂が好きよね」

「ここまでお風呂が好きな子はいないんじゃ?」


 今日は治療で頑張ったのもあって、お風呂がとっても気持ちいいです。

 このまま湯船にずっと入っていて、思わずふやけちゃいそうです。

 お風呂から上がったら、着替えてベッドで少しゴロゴロします。


 コンコン。


「失礼します。夕食のご用意ができました」


 おっと、良いタイミングで侍従の人が僕達の事を呼んでくれたよ。

 僕達は、侍従の人の後をついて行って食堂に向かいます。


「わあ、今日はミートパスタもあるんですね!」

「ははは、レオ君の大好物らしいから用意させたぞ」


 食堂に入ったら、僕の表情を見たマンデラ様がしてやったりって表情をしていたよ。

 でも、ミートパスタは僕の大好物だから、思わずニコニコとしちゃうよ。

 そして、マンデラ様の側には中年の女性が立っていたよ。

 赤髪のロングヘアで、にこやかそうなのにスタイルが抜群です。

 僕達は、それぞれ案内された席に座ります。

 うーん、僕の席がマシューさんの隣なのは気にしないでおこう。


「先に紹介しよう。妻のハルカだ」

「ハルカと申します。この度はディフェンダーズ伯爵領の怪我人を救って頂き、感謝申し上げます」

「明日、私とマシュー殿は話し合いで同行できないのでな。妻が同行する予定だ」


 おお、明日はハルカさんが僕達と同行するんですね。

 マシューさんとマンデラ様も、話し合いで大変だね。


「では、サンダーランド辺境伯領からの来客を歓迎して乾杯とする。乾杯!」

「「「乾杯!」」」


 マンデラ様の音頭で、夕食が始まりました。

 僕とシロちゃんは、早速美味しそうなミートパスタを口にしました。


「うーん、とっても美味しいです。今まで食べたミートパスタの中で、一番美味しいです!」

「おお、喜んでくれて何よりだ。それに、我が家のミートパスタは黒髪の魔術師のお墨付きを貰えた様だな」

「ええ、そうですわね。それに、こう見ると普通の男の子って感じだわ」


 とっても美味しいミートパスタに、僕もシロちゃんもテンションが上がっちゃいました。

 そんな僕の事を、マンデラ様とハルカさんだけじゃなくてこの場にいる全員がニコニコと見ていました。


「うん、とっても美味しいわ。年始の挨拶に出た料理と同じくらいだわ」

「そうね。でも、レオ君のお陰で私達も何とか食べられているわね」


 僕とシロちゃんがもりもりとミートパスタを食べているので、フレアさんとミシャさんも緊張しながらもキチンと食事を食べていました。


「そうそう。レオ君、村を襲ったオークを倒した時に魔法以外に剣技も使ったと聞いたが、それは本当か?」

「はい、魔法剣と身体能力強化を使ってオークを倒しました。魔法を使うと他の人を巻き込んじゃいそうなので。フレアさんとミシャさんが、魔法剣と身体能力強化を教えてくれたお陰です」

「ふむふむ、黒髪の魔術師は魔法剣すら操るという噂は本当だったのか。優秀な師匠がいると、レオ君の成長も早いんだな」


 えー、僕が魔法剣でオークと戦ったのが、もう噂として隣の領に広まっているんだ。

 でも、フレアさんとミシャさんのお陰なのは間違いないし、今も色々と教えてくれるもんね。

 こうして、主に僕の噂話を中心にして賑やかに夕食は進んでいきました。

 勿論、ミートパスタは僕もシロちゃんも完食したよ。

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