第二百七十話 早速治療を始めます

 僕とシロちゃんは昼食を食べて元気満タンになったので、やる気満々で馬車に乗り込みました。


「治療院は、屋敷から直ぐのところにある。規模が大きいので、入院患者は多いのだよ」


 馬車に同乗しているマンデラ様が治療院について話してくれたけど、入院している人が多いんだね。

 これは、頑張って治療しないとね。

 あっという間に治療院に到着したので、早速治療担当のシスターさんの案内で大部屋に入ります。


「わあ、沢山の人がいますね」

「最近は、風邪をこじらせて体調を崩す人も増えております」


 サンダーランド辺境伯領でも、冬になって体調を崩している人も増えたもんね。

 怪我をしている兵の人も合わせて、全部治療しちゃおう。


「じゃあ、シロちゃん、手分けして治療を始めようね」

「えっ、スライムが治療をするのですか?」


 シロちゃんも了解と触手をフリフリとして僕の頭から飛び降りたけど、シスターさんはまさかスライムが治療するとは思ってないみたいだよ。

 でも、シロちゃんはスーパースライムだから、きっとビックリしちゃうね。


 ピカー。


「はい、どうですか? 胸も良くなったと思いますよ」

「おやまあ、すっかり胸が苦しいのが良くなったよ。坊や、ありがとうね」


 ピカー。


「す、スライムが回復魔法? すげー、腕の痛みが良くなったぞ」


 もう治療するのは慣れているので、僕とシロちゃんは次々と怪我人や病人を治療していきます。

 軽症者ばかりなので、魔力もそんなに使ってないもんね。


「いやはや、これには驚いた。黒髪の魔術師は、ここまで治療が手際良いとは」

「レオ君はニコニコしながら治療するので、治療を受ける側も気持ちが良いんですよ。サンダーランド辺境伯領でも、レオ君の治療はとても良いと評判です」


 とっても驚いているマンデラ様に、マシューさんがニコリとしながら色々と話していました。

 それでも、前みたいに急いで治療する様にはしていないんだよね。


「では、こちらのベッドのシーツを替えますね」

「はい、荷物を片付けますね」


 フレアさんとミシャさんも、一緒に治療院に行った時と同じく、手早くベッドメイキングをしたり荷物を片付けたりしています。

 綺麗にするのも、治療の原則だもんね。


「ふう、沢山の人を治療できました!」

「レオ君、お疲れ様。少し休憩しよう」


 二時間かけて、三つの大部屋にいた怪我人や病人を治療できました。

 大部屋があと二つあるので、今日は大部屋にいる人を全部治療しちゃいます。


「正直な所、二日間かけて大部屋にいる人を治療する予定だった。レオ君は、本当に治療の手際が良いね」

「僕は、セルカーク直轄領にいる頃からずっと治療していました。だから、治療は結構自信があります」

「うんうん、流石は黒髪の魔術師であり黒髪の天使様だ」


 治療院の控室で、僕とシロちゃんはお菓子を貰ってご満悦です。

 魔法を使うと、甘い物が欲しくなるんだよね。

 あっ、ちょっと気がついた事があるよ。


「あの、マンデラ様、ちょっと良いでしょうか?」

「何だね、レオ君」

「少し気になった事がありました。治療院が、思ったよりも汚れていました。汚れが多いと病気になる人が多いって、本で読んだ事があります」


 サンダーランド辺境伯領の治療院は清潔だったけど、ディフェンダーズ伯爵領の治療院は患者が多くて掃除まで手がまわらなかったみたいですね。

 その代わりに、フレアさんとミシャさんが床をモップで拭いたりゴミを片付けたりしていました。


「それはこちらの不手際だ。患者の増加に対応するのを優先して、綺麗な環境を作ってなかったな。恐らく、国境の前線でも同じ事が起きていよう」

「サンダーランド辺境伯領でも、人の手が不足していた時は同じ事が起きていた。レオ君が多くの人を治療してくれて、手が空いてからようやく清掃作業ができたのだよ」


 あわわ、マンデラ様に加えてマシュー様も腕を組んで考え込んじゃったよ。

 ちょっと、言い過ぎちゃったかな。


「あの、すみません。色々と言っちゃって」

「いやいや、レオ君は様々な場所で治療を行っているからこそ、治療する環境にも目が行くのだよ。何も謝ることはない」

「前線だと中々衛生的にするのは難しいけど、せめて治療を行う所は清潔にする必要がある。王城にも、レオ君からの進言として共有しておこう」


 あわわわ、何だか話が大きくなっちゃったよ。

 マシューさんが、早速通信用魔導具をポチポチといじっているよ。

 フレアさんとミシャさんも仕方ないなあって表情をしていたけど、僕の事を助けてはくれなさそうです。

 因みに、シロちゃんは美味しそうにお菓子を食べていて、僕のやり取りを見ていないふりをしていました。

 でも、僕がビクッってなると、シロちゃんもピクッってなるのをちゃんと見ているんだからね。

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