第五百六十七話 王都凱旋

 そして、馬車内で色々とお話しながら王都の防壁の前に到着しました。

 すると、想像以上のことが起きていました。


「ええ! 門の前にもたくさんの人が並んでいるよ!」

「国を救った宮廷魔導師の到着ですので、このくらいは当然かと」


 もう、人人人の大混雑が起きていました。

 ジェシカさんは当たり前って言っているけど、僕としたら完全に予想外です。

 すると、御者の人が馬車内に声をかけてきました。


「レオ様、国民が待っておりますので窓を開けて手を振ってくださいませ」


 えーって思っちゃったけど、ジェシカさんもやって下さいと言われたので僕たちは馬車の窓を開けて手を振り出した。

 すると、とんでもない歓声が上がったのだ。


「「「うおー!」」」

「黒髪の天使様が顔を出したわ」

「あんなに小さいのに、大活躍したのね」

「連れている従魔も、とても可愛いわ」


 僕だけでなく、シロちゃん、ユキちゃん、ピーちゃんも窓から顔をのぞかせて手や触手をふりふりしています。

 そして、門を抜けると更に凄い人の数が集まっていた。

 王城まで続く大通りの両端にびっしりと人が並んでいて、みんな僕に手を振っていました。

 僕も手を振り返すけど、馬車がゆっくりとしか進まないので段々と手を振り疲れちゃった。

 観衆は貴族街にも集まっていて、貴族や使用人も大通りに出て手を振っていた。

 こうして、普通だったら門から十分ちょいあれば王城に着くところを、一時間近くかけて通過しました。

 既に僕たちはヘロヘロで、回復魔法をかけていたくらいです。

 でも、まだまだこれからが本番でした。


「御一行様、王城に到着しました」


 なんと王城の前に貴族とかが集まっていて、陛下も玄関前で待っていました。

 僕たちだけでなく、到着した兵も待っていたみたいです。

 そして、僕たちが馬車から降りた、その時でした。


「おにーさまー!」

「おにーちゃん!」


 ガバッ。


 涙目のクリスちゃんとマヤちゃんが、僕に抱きついてきました。

 突然のことにびっくりしたけど、僕たちも二人に会えたのがとても嬉しくて二人を抱きしめました。

 すると、ウェンディさんやアレックスさん、それにモニカさんとターニャさんも僕のところにやってきて抱きしめてくれました。

 うん、ようやく王都に帰ってきたんだと実感できた。


「ふむ、やはり国を救った黒髪の天使といえどもまだ子どもだということだな」

「陛下、申し訳ありません」

「なに、何も問題ない。王妃と息子もレオのところに行っておる。これだけ多くの人に愛されるのも、本当に凄いことだといえよう」


 陛下とギルバートさんの言う通り、僕の周りには多くの人が集まって押しくら饅頭みたいになっちゃいました。

 それでも、多くの人とこうして再会できて、本当に良かったと思った。

 このままではいつまでたっても動けないので、王城の中に入って大きな部屋に移動することになりました。


「お兄様、この鳥さんも新しい友達なの?」

「おともだち?」

「ピーちゃんっていうんだよ。とっても強くて、とっても役に立ったんだよ」

「「へえー」」

「ピィ」


 クリスちゃんとユキちゃんは、僕の両側でギュッと手を握っています。

 新しいお友達も紹介しているけど、二人とも随分と大きくなったね。

 特にマヤちゃんは、言葉もしっかりしてきていました。

 因みに、陛下と大物貴族はこの後の謁見の準備をするために別行動となりました。

 こうして大きめの部屋に移動したら、僕の後ろの馬車に乗っていたブラウニー伯爵とアイリーンさんが苦笑しながら話しかけてきました。


「いやあ、レオの人気は予想以上だったな。まさか大通りにあんなに人が集まっているとは思わなかったぞ」

「私たちも、こんなになるとは思わなかったわ。みんなと話をしていたけど、やっぱりレオ君って凄いってみんな言っていたわよ」


 ブラウニー伯爵とアイリーンさんの言葉を肯定するように、兵や治療班の面々がウンウンと頷いていた。

 僕だって、まさかこんなことになっているとは思わなかったよ。

 すると、クリスちゃんがあることを聴いてきた。


「ねーねーお兄様、たくさんの人を治療したの?」

「うーん、サンダーランド辺境伯領に着いた時や戦闘があった時は、たくさんの兵を治療してとても忙しかったよ。でも、普段はそんなに怪我をした兵がいなかったから、治療班の人とユキちゃんに頑張ってもらったんだ」

「アオン!」

「「おおー!」」


 ユキちゃんは二人にドヤ顔でいるけど、今回ユキちゃんは大活躍だったんだよね。

 ピーちゃんも頑張ったけど、一番凄かったのは間違いなくシロちゃんだけどね。

 すると、アイリーンさんがこんなことを言ってきました。


「ふふ、レオ君はたくさんの兵を鍛えてとっても強くしたのよ。だから、王国が有利に戦えたわ。私も指揮をしていてとても楽だったのよ」

「戦死者が異常なほど少なかったけど、それも間違いなくレオが鍛えたのもあるな。怪我をしても余程のことじゃなければレオにかかれば直ぐに全快するし、兵も安心して戦闘できただろうな」

「「すごーい!」」


 うう、ブラウニー伯爵も混じって僕のことをひたすら褒める展開になっちゃった。

 治療班も兵も僕が凄いと言っていたし、特に兵が王都に残した恋人の告白をサポートをしたことが一番大きい反響だった。

 黒髪の天使様は恋のキューピット役もするのかと、ご夫人方がキラキラした目で僕のことを見ていた。

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