小さな大魔法使いの自分探しの旅～親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします～

第二百三十話 サンダーランド辺境伯領の冒険者ギルドへ

「レオ君、今日は治療は無しだ。入退院の手続きで治療院が忙しいのだよ」

　治療院での治療をした翌朝、ボーガン様から僕に話がありました。

　昨日もちらっと聞いたけど、治療院の方が忙しいんだって。

「今日は冒険者ギルドに行って、到着の手続きをした方が良いだろう。一部の依頼の完了もあるだろうな」

「分かりました。あの、僕はいつまでボーガン様のお屋敷にいれば良いですか？」

「少なくとも、前線の兵の治療が終わるまでだな。治療がなければ他の依頼を受けても良いが、暫くは兵の治療を優先してくれ」

　ボーガン様としては、僕がいる内に前線を立て直したいんだ。

　僕としても怪我をしている人は見過ごせないし、治療は積極的に行いたいです。

　今日は、シロちゃんと一緒に冒険者ギルドに向かいます。

　地図を書いて貰ったし、治療に行く時に乗っていた馬車から冒険者ギルドが見えたんだよね。

　折角なので、街の様子を見つつ歩いて冒険者ギルドに向かいます。

　ガヤガヤガヤ。

「沢山の人が、通りを歩いているね」

　大通りは、早朝にも関わらず多くの人が歩いていました。

　今までの街の中でも、圧倒的に人が多いね。

　途中のパン屋さんで、旅の間に消費したパンを補充します。

　いよいよ、冒険者ギルドに到着です。

　ガヤガヤガヤ。

「わあ、冒険者ギルドの中も人がいっぱいだね」

　冒険者ギルドの中も、様々な服装の人で溢れていました。

　年齢もバラバラで、若い人から年配の人までいます。

　僕とシロちゃんは、きょろきょろと辺りを見回りながら受付の列に並びました。

「あら、坊やも依頼を受けるの？」

「あっ、僕は別の街から来たので到着の手続きをしに来ました」

「そうなのね。小さいのにちゃんとしているわね」

　僕の前に背の高くてとってもスタイルの良い赤い短髪のお姉さんが並んでいて、ニコリと話しながら僕の頭を撫で撫でしていました。

　背中にとっても大きな剣を背負っていて、雰囲気からもとっても強いのが分かります。

「お姉さんも依頼を受けに来たんですか？」

「私も到着の手続きだよ。知り合いが治療院に入院していたから、見舞いに行くんだよ。まあ、今日退院するらしいけどな」

　あっ、僕が回復魔法を使った治療院に、お姉さんの知り合いが入院していたんだ。

　でも、無事に治って良かったですね。

「へへへ、ひっく、ガキがいるぞ」

「うっく、ここはガキのいる所じゃないぞ」

「ははは、ひっく、ガキは帰ってママのおっぱいでも飲んでな」

　うん、僕の後ろで何かを言っている人がいるけど、特に気にしない様にしよう。

　とってもお酒臭いし、こんな状態で依頼を受けにいくなんて普通じゃないですね。

　ぐいっ。

「わあ！」

「おい、ガキが！　無視するな！」

「「ガハハ！」」

　酔っ払いを無視していたら、急に僕の服の襟首を掴んで持ち上げてきた。

　喉が締まらないように何とか胸元を開けているけど、この人とっても面倒くさい人だったんだ。

　でも、僕は一人じゃないんだもんね。

　ヒューン、どーん！

「ぐはぁ！」

「けほけほ」

　僕の頭の上に乗っていたシロちゃんの強烈なホーリーバレットで、僕を掴んでいた酔っ払いが思いっきり吹っ飛びました。

　僕は床に放り出されたけど、何とか無事です。

「この、カギ……ぶべら！」

「小さな子に、何をするのよ！」

　更に僕を殴ろうとした酔っ払いを、逆にお姉さんがキツい一撃をくらわせました。

「くそ！」

　バリバリバリ。

「ぎゃあああ！」

　僕の事を蹴っ飛ばそうとした酔っ払いには、逆に尻もちをつきながら強烈な電撃を放ちました。

「ははは、子どもにやられているよ」

「情けねー、喧嘩を売って負けてやがるぞ」

「ねーちゃんも強いな」

　僕達の周りの人はざわざわしていたけど、概ね僕達に好意的でした。

　ザッ、ザッ、ザッ。

「はあ、騒ぎが起きていると聞いて駆けつけてくれば、ギルドの品位を落とす馬鹿がこのギルドにもいるとは」

「あっ、ホークスターさん」

「「「げっ、ギルドマスター！」」」

　騒ぎを聞いて僕達の所にやってきたのは、この冒険者ギルドのギルドマスター、ホークスターさんでした。

　おお、ホークスターさん、激おこモードですよ。

「よりによって、黒髪の魔術師と紅の剣士に喧嘩を売るとは。お前ら、死ななくて良かったな」

「「「はっ！？」」」

　おお、お姉さんも二つ名を持っている凄い剣士だったんだ。

　というか、周りの冒険者は直ぐに僕達の事を分かっていたみたいで、ウンウンと頷いていました。

「実はな、俺もお前らの事を待っていたんだ。依頼先での窃盗事件の件でな」

「「「げっ！」」」

　更にホークスターさんが鬼のような怒った顔になったけど、この酔っ払いはそんな酷い事をしていたんだね。

「お前らは拘束して守備隊に引き渡す。連れて行け」

「「「はっ！」」」

　そして、酔っ払いはムキムキマッチョの職員によって、ギルドの奥に連れられて行きました。

　悪い事はしちゃだめだね。

　情けない格好で連れ去られていく酔っ払いを見て、僕もシロちゃんも改めて思いました。