第五百五十九話 交代部隊が到着しました

 停戦が決まっても、僕がやることは変わりありません。

 とにかく捕虜になった人の治療を続けるだけです。

 そして、遂に最後の一人の治療を終えました。

 もちろん、最後はマイアさんの親戚のお兄さん。


 シュイン、シュイン、ぴかー!


「ふう、これで治療終わりです。最後になってごめんなさい」

「いやいや、最後にしてくれと頼んだのは私の方だからね。それにしてもやっぱり凄い魔法だ、流石にマイアとは比べ物にならないよ」


 マイアさんの親戚のお兄さんも、元気になってとってもいい表情です。

 マイアさんも、とってもホッとした表情ですね。

 ちなみに、既に治療を終えた人のうち半分がサンダーランド辺境伯領の治療施設に移っています。

 十分体調を整えて、王都までの旅に耐えられるようにします。


 ぱちぱちぱち。


 すると、突然僕に向けて拍手が送られました。

 慌てて振り向くと、三人の女性をはじめとした人々が拍手をしていました。

 えっと、初めて見る人たちだけどもしかして交代要員の人なのかな。


「流石凄い治療だわ。これだけの治療を行う治癒師は初めてよ」


 背が小さいけど、スタイル抜群の女性が僕に近づいてきた。

 赤髪のロングヘアと同じ赤い服とマントを羽織っているけど、これってもしかして……


「宮廷魔導士のレイアースよ、レオ君よろしくね。火魔法を得意とするのだけど、回復魔法も使えるよ」

「あの、僕はレオです。スライムのシロちゃん、コボルトのユキちゃん、サンダーホークのピーちゃんです」

「優秀な従魔を連れているのね。それに治療の腕を見たけど素晴らしかったわ。宮廷魔導士に相応しい腕前よ」


 レイアースさんがニコリとしながら僕と握手してくれたんだけど、まさかここで別の宮廷魔導士と会えるとは思わなかったよ。

 すると、レイアースさんはペタペタと僕の体を触ってきました。


「うーん、ちょっと服の大きさがあっていないわね……」

「この基地にいる間に、体が大きくなったんです。宮廷魔導士の服も小さくなっちゃって……」

「分かったわ、後で簡単に手直ししてあげるわ」


 そういうと、レイアースさんは僕の頭をニコリとしながら撫でていました。

 もしかして、家事が得意な人なのかもしれないね。

 すると、この場にアイリーンさんもやってきました。


「あっ、レイアース先輩お久しぶりです」

「ええ、久しぶりね。孫の面倒を見ていて、中々来れなくて申し訳ないわ」

「確か初孫でしたわね、とっても可愛い盛りですものね」


 アイリーンさんとレイアースさんの会話を聞いたら、なんだか凄いことが聞こえちゃった。

 どう見ても二十歳くらいにしか見えないアイリーンさんに、お孫さんがいるの?

 アイリーンさんに会ったことがない人たちも、この話を聞いてとっても驚いちゃったよ。


「アイリーン先輩は、グラスルージュ伯爵夫人様でもあるの。公務の合間を縫って、宮廷魔導士として活躍されているのよ。とても面倒見が良くて、それでいてとても強いの」

「ふふふ、私なんてただのおばあちゃんですわよ。孫も少し大きくなったので、こうして休んでいた分の代わりではないですが前線にやってきましたわ」


 なんというか、見た目以上にとても芯の強い人なんだ。

 もう、この場にいる人がみんなアイリーンさんの雰囲気に飲まれちゃいました。

 でも、とっても強い人がいるなんて、僕たちがいなくなった後でも安心ですね。

 すると、部屋に別の人が入ってきました。


「おや、アイリーンじゃないか。孫の面倒はいいのか?」

「これはエラさんではありませんか、お久しぶりですわ。もう歩けるようになりましたし、半年間こちらに居させてもらうことになりましたの」

「ははは、それは安心だ。何せ、停戦したばっかりだからな。半年もあれは、状況も落ち着くだろうな」


 エラさん、アイリーンさんと気さくに話をしているよ。

 この基地最強の人はどんな人でも話せるんだ。

 改めて、凄い人だと思いました。

 こうして交代部隊も到着し、いよいよ明日停戦となる日になります。

 僕も、何かあった時のために一日待機する予定です。

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